公訴提起の遅延と迅速な裁判
憲法37条1項
判旨
犯行から公訴提起までに5か月余を経過したとしても、憲法37条1項が保障する被告人の「迅速な裁判を受ける権利」を侵害したとはいえず、適法である。
問題の所在(論点)
犯行から5か月余を経過した後に公訴を提起することが、憲法37条1項の保障する「迅速な裁判を受ける権利」を侵害し、公訴棄却や違憲判決の対象となるか。
規範
憲法37条1項は「迅速な裁判を受ける権利」を保障している。もっとも、犯行から公訴提起までの期間が、刑事手続の性質や事案の複雑性、捜査の進展状況等に照らして不当に遅延したものといえない場合には、同条に違反して被告人の権利を侵害するものとは解されない。
重要事実
被告人が犯行に及んでから、検察官によって本件公訴が提起されるまでに、5か月余の期間が経過していた。弁護人は、この期間の経過が迅速な裁判を受ける権利の侵害(憲法37条違反)および残虐な刑罰(憲法36条違反)にあたると主張して上告した。
あてはめ
本件における犯行から公訴提起までの「5か月余」という期間は、刑事手続の一般的な推移に照らして特段の長期にわたるものとはいえない。また、この程度の期間の経過によって、被告人の防御権が著しく不当に制限されたり、裁判の迅速性が実質的に損なわれたりした事実は認められない。したがって、本件公訴提起の手続が迅速を欠いたものとは評価できず、憲法37条1項に違反する事由はないといえる。
結論
本件公訴提起は憲法37条1項に違反せず、これを前提とした量刑の判断も正当である。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は公訴提起までの期間が比較的短期間(5か月)である事例だが、実務上、より長期の遅延(いわゆる「高田事件」判決など)がある場合には、遅延の原因が検察側の責めに帰すべきか、被告人に不利益が生じているか等の具体的衡量が必要となる。
事件番号: 昭和28(あ)1486 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利が侵害されたとしても、直ちに判決破棄の事由とはならない。本件では原審の審判に迅速を欠いた事実は認められず、上告は棄却された。 第1 事案の概要:弁護人が、原審(控訴審)の審判が迅速を欠いたものであるとして、上告審において判決の破棄を求めた事案。 第2 問題の所…