付審判請求事件の審理方式に不当な措置が認められるが、不公平な裁判をするおそれがあるとはされなかつた事例
憲法37条1項,刑訴法21条
判旨
裁判官の忌避事由である「不公平な裁判をする虞れ」(刑訴法21条)は、審理方式に過剰な便宜供与等の行き過ぎた点があるとしても、そのことから直ちに肯定されるものではない。
問題の所在(論点)
裁判官が特定の当事者(請求人側)に対して、法令の予定を超えた過剰な便宜を供与するなどの審理方式を採った場合、刑訴法21条にいう「不公平な裁判をする虞れ」があるといえるか。
規範
刑訴法21条にいう「不公平な裁判をする虞れがあるとき」とは、通常人の判断において、裁判官が偏頗な裁判をするのではないかとの疑念を抱く客観的な事情がある場合をいう。審理手続の運用に不適切な点があるとしても、その手続自体から客観的に偏頗な裁判がなされる具体的危険性が認められない限り、忌避事由には当たらない。
重要事実
付審判請求事件において、裁判所は、弁護士でない請求人らに対しても記録の閲覧謄写を認め、証拠調べに際して請求人でない事務局員2名の立会を許可し、さらに54名という多数の請求人の立会質問を許容した。これら一連の審理方式が、裁判官の公平性に疑いを生じさせるとして忌避の申立てがなされた事案である。
あてはめ
本件における記録の閲覧謄写や事務局員の立会、多数の請求人による質問の許可といった審理方式は、弁護士法や刑事訴訟法の原則に照らせば「行き過ぎと見られる措置」であることは否定できない。しかし、これらの措置は審理を円滑かつ充実させる意図に基づく手続上の運用に留まる。当事者双方の主張を公平に聴取する姿勢そのものが歪められた事実は見当たらず、当該審理方式自体から直ちに裁判官が不公平な判断を下す客観的状況にあるとは評価できない。
事件番号: 昭和47(し)51 / 裁判年月日: 昭和47年11月16日 / 結論: 棄却
本件付審判請求事件の審理を担当する裁判所が示した審理方式(判文参照)は、裁量の許される範囲を逸脱している疑いを免れないけれども、そのことはただちに右裁判所を構成する裁判官らを忌避する事由とはなりえない。
結論
本件審理方式には行き過ぎた点はあるものの、直ちに裁判官が不公平な裁判をする虞れがあるとは認められないため、忌避事由には当たらない。
実務上の射程
裁判官の訴訟指揮や手続運用が不適切であることを理由とする忌避申立てを制限する射程を有する。単なる手続上の瑕疵や当事者への過度な配慮(便宜供与)があるだけでは足りず、それが「裁判の結果を歪める偏頗性」に直結することを具体的に示す必要がある。
事件番号: 昭和44(し)53 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: その他
一 刑訴法二六二条以下に規定するいわゆる付審判請求事件における被疑者は、同法二一条一項により、裁判官忌避の申立をすることができる。 二 忌避申立の対象とされた裁判官が、当該事件の審理を担当する裁判所の合議体の構成を離れたときは、特別抗告の論旨につき判断するまでもなく、同裁判官に対する忌避申立を却下した第一審決定およびこ…
事件番号: 昭和46(し)57 / 裁判年月日: 昭和46年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の事件の審理に関与した裁判官が、別の共犯者の事件を担当することは、憲法37条1項が保障する不公平な裁判をするおそれがあるものとはいえず、違憲ではない。 第1 事案の概要:被告人は、自身の事件の審理を担当する裁判官が、以前に当該事件と共犯関係にある他の被告人の事件の審理に関与していたことを理由…
事件番号: 昭和50(し)51 / 裁判年月日: 昭和50年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状一本主義の趣旨に反する異例の措置がとられた場合であっても、直ちに当該裁判官に不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない。 第1 事案の概要:被告事件の審理において、第一審裁判所の裁判官が、起訴状一本主義(刑訴法256条6項)の趣旨に反するような、証拠書類をあらかじめ閲読する等の異例の措置…
事件番号: 昭和31(し)34 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が刑事訴訟法312条2項に基づき予備的訴因の追加を命ずることは、審理が相当程度進捗した段階で行われる限り、直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとは認められず、裁判官の忌避事由(刑訴法21条1項)を構成しない。 第1 事案の概要:傷害致死等被告事件の第一審において、裁判所(合議体)が主たる訴因…