一 刑訴法二六二条以下に規定するいわゆる付審判請求事件における被疑者は、同法二一条一項により、裁判官忌避の申立をすることができる。 二 忌避申立の対象とされた裁判官が、当該事件の審理を担当する裁判所の合議体の構成を離れたときは、特別抗告の論旨につき判断するまでもなく、同裁判官に対する忌避申立を却下した第一審決定およびこれを維持した原決定を取り消す実益を欠くに至つたものとして、特別抗告を棄却すべきである。
一 いわゆる付審判請求事件における被疑者の忌避申立権の有無 二 特別抗告と原決定を取り消しても実益がないようになつたときの措置
刑訴法20条,刑訴法21条,刑訴法262条,刑訴法265条,刑訴法266条,刑訴法267条,刑訴法433条1項,刑訴規則13条
判旨
刑事訴訟法21条1項に規定される「被告人」には付審判請求事件の被疑者も含まれ、付審判請求の審理を担当する裁判官についても、除斥・忌避・回避の規定が適用される。
問題の所在(論点)
付審判請求事件の審理にあたり、刑事訴訟法21条1項に基づく裁判官の忌避に関する規定が適用されるか。特に、公訴提起前の段階である同事件において、申立権者としての「被告人」に「被疑者」が含まれるかが問題となる。
規範
刑事訴訟法における除斥、忌避、回避の制度は、公平な裁判所による裁判を保障するため、裁判官の職務執行一般を広く対象とする。同法21条1項等に「被告人」の文言があるが、文理にのみとらわれず、立法の沿革や制度の趣旨から合理的に解釈すべきであり、同条の「被告人」には付審判請求事件の「被疑者」も含まれると解する。
重要事実
付審判請求事件(刑訴法262条)の審理を担当する地方裁判所の合議体を構成する裁判官に対し、申立人(被疑者)が不公平な裁判をするおそれがあるとして忌避の申立てを行った。原審は、刑訴法21条1項にいう「被告人」ではない者からの申立てであるとして、これを不適法と判断したため、最高裁に抗告がなされた。
事件番号: 昭和47(し)50 / 裁判年月日: 昭和47年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避事由である「不公平な裁判をする虞れ」(刑訴法21条)は、審理方式に過剰な便宜供与等の行き過ぎた点があるとしても、そのことから直ちに肯定されるものではない。 第1 事案の概要:付審判請求事件において、裁判所は、弁護士でない請求人らに対しても記録の閲覧謄写を認め、証拠調べに際して請求人でな…
あてはめ
付審判請求制度は、検察官の不起訴処分の当否を裁判官が審査するものであり、その権限は極めて広範である。かかる職務の公正を期する必要性は通常の公判手続と同様に高く、制度の趣旨に鑑みれば、裁判官の除斥・忌避規定の適用があることは明らかである。文言上「被告人」とされていても、付審判請求事件の性質上、被疑者を排除する理由とはならない。
結論
付審判請求事件においても、裁判官に対する忌避の規定は適用され、被疑者は忌避申立てを行うことができる。
実務上の射程
付審判請求手続が「準起訴」としての性質を有することから、被告人に準じた権利保護を認める。また、忌避申立て後に対象裁判官が異動した場合は、申立ての対象を失い、抗告の実益がなくなるという点も実務上重要である。
事件番号: 昭和47(し)51 / 裁判年月日: 昭和47年11月16日 / 結論: 棄却
本件付審判請求事件の審理を担当する裁判所が示した審理方式(判文参照)は、裁量の許される範囲を逸脱している疑いを免れないけれども、そのことはただちに右裁判所を構成する裁判官らを忌避する事由とはなりえない。
事件番号: 昭和31(し)34 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が刑事訴訟法312条2項に基づき予備的訴因の追加を命ずることは、審理が相当程度進捗した段階で行われる限り、直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとは認められず、裁判官の忌避事由(刑訴法21条1項)を構成しない。 第1 事案の概要:傷害致死等被告事件の第一審において、裁判所(合議体)が主たる訴因…
事件番号: 昭和48(し)66 / 裁判年月日: 昭和48年10月8日 / 結論: その他
一 訴訟手続内における審理の方法、態度などは、それ自体としては裁判官を忌避する理由となしえない。 二 公判期日前の打合せから第一回公判期日終了までの裁判長の訴訟指揮権、法廷警察権の行使の不当を理由とする忌避申立は、本件のような事情(判文参照)のもとにおいては、訴訟遅延のみを目的とするものとして、刑訴法二四条により却下す…
事件番号: 昭和46(し)57 / 裁判年月日: 昭和46年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の事件の審理に関与した裁判官が、別の共犯者の事件を担当することは、憲法37条1項が保障する不公平な裁判をするおそれがあるものとはいえず、違憲ではない。 第1 事案の概要:被告人は、自身の事件の審理を担当する裁判官が、以前に当該事件と共犯関係にある他の被告人の事件の審理に関与していたことを理由…