原判決が所論事実を余罪と認定処罰した趣旨ではないとして、三一条違憲主張が欠前提とされた事例
憲法31条
判旨
余罪を量刑の資料として考慮することは、それが実質上処罰する趣旨に出たものでない限り、憲法及び刑事訴訟法に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、起訴されていない余罪を量刑の資料として考慮することが、憲法または刑事訴訟法上許されるか。特に、それが実質的な処罰にあたるか否かの境界が問題となる。
規範
被告人が起訴されていない別罪(余罪)を、量刑の判断にあたって考慮することは許される。ただし、その限度は、被告人の性格、経歴、犯行の動機、態様等の情状を推知するための資料として考慮するにとどめるべきであり、当該余罪を実質上処罰する趣旨で重く処断することは許されない。
重要事実
被告人が起訴事実以外の事実(余罪)について、控訴審判決において量刑上考慮された。弁護人は、この認定が余罪を実質上処罰する趣旨に出たものであり、憲法等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、原判決(控訴審)が検察官の控訴趣意に対する判断として所論の余罪事実を認定している。しかし、その判文の内容を精査すると、当該余罪を「実質上処罰する趣旨」で量刑に反映させたものとは認められない。したがって、適法な情状推知の範囲内での考慮にとどまっていると解される。
事件番号: 昭和56(あ)601 / 裁判年月日: 昭和57年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が起訴されていない事実(余罪)を、実質上処罰する趣旨で量刑の資料として考慮することは、不告不理の原則や適正手続に反し許されない。 第1 事案の概要:被告人らが上告した事案において、弁護人は「原判決が余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料として考慮した」ことが憲法31条、38条3項、39条およ…
結論
余罪を実質上処罰する趣旨で考慮したとは認められないため、原判決に憲法違反や刑事訴訟法違反の不当な点はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
余罪の量刑考慮に関するリーディングケースの一つ。答案上は、余罪考慮の限界を「実質的処罰」に至っているか否かで画定する際の根拠として引用する。情状資料としての考慮(性格・動機等の推知)は許容されるが、別罪を起訴せずしてその責任を問う形での重罰化は否定されるという二段構えの論理構成で用いる。
事件番号: 昭和27(あ)4555 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科の事実を量刑の資料として用いることは、憲法13条および14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が被告人の前科の事実を量刑の判断材料とした。これに対し被告人が、前科を量刑に反映させることは憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権)および憲法14条(平等…