判決登載刊行物の号巻丁数のみを掲げ、もしくは裁判所名および言渡日のみを指摘するにとどまる主張は判例の具体的な摘示があるといえない。
上告趣意書に判例の具体的摘示がないとされた事例
刑訴法407条,刑訴規則253条
判旨
刑訴法405条2号、3号にいう「判例」に地方裁判所の判決は含まれず、また、判例違反を主張する際には具体的な判例の摘示が必要である。
問題の所在(論点)
地方裁判所の判決が、刑訴法405条2号及び3号にいう「判例」に該当するか。また、判例違反を主張する際、具体的な内容に踏み込まない形式的な指摘のみで「判例の具体的な摘示」といえるか。
規範
刑事訴訟法405条2号及び3号に規定される「判例」とは、最高裁判所、大審院、または上告裁判所としての高等裁判所(若しくは廃止前の控訴裁判所)が示した判断を指し、地方裁判所の判決はこれに含まれない。また、判例違反を上告理由とする場合には、単に刊行物の表示や裁判所名・言渡日を指摘するだけでなく、具体的な判例の摘示を要する。
重要事実
被告人側は、原判決が地方裁判所の判決等の例に反するとして、憲法違反や判例違反(刑訴法405条2号、3号)を理由に上告を申し立てた。しかし、その主張において引用されたのは地方裁判所の判決であったり、判決登載刊行物の号巻丁数や裁判所名・言渡日のみを掲げたりするものであった。
事件番号: 平成4(あ)1070 / 裁判年月日: 平成8年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条2号および3号に規定される「判例」に地方裁判所の判決は含まれず、これに反することを理由とする上告は認められない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよびその弁護人は、下級審の有罪判決に対し、憲法違反、事実誤認、法令違反に加え、地方裁判所の判決例との相反を理由に判例違反を主張して…
あてはめ
本件において弁護人が引用した地方裁判所の判決は、刑訴法405条が予定する上告理由としての「判例」には当たらない。また、刊行物の表示や言渡日のみを指摘する手法は、形式的な符号の提示に留まり、具体的な判例の摘示とは評価できない。さらに、その他の引用判例についても事案が異なり、本件に適切ではないと判断される。
結論
本件上告は適法な上告理由にあたらないため、刑訴法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
上告趣意書において判例違反を構成する際の基礎的実務指針となる。地方裁判所の判決を引用しても直ちに上告理由とはならないこと、及び判旨の内容と本件事案との関連性を具体的に摘示する必要があることを示している。
事件番号: 昭和47(あ)1392 / 裁判年月日: 昭和48年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張・判断を経ない憲法違反の主張や、単なる事実誤認、法令違反、量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法21条、31条違反(違憲主張)を理由に上告を申し立てた。しかし、これらの違憲の点は原審(控訴審)において主張されておらず、…
事件番号: 昭和41(あ)1697 / 裁判年月日: 昭和48年3月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、検察官の上告について、引用された判例が事案を異にすること、及び単なる法令違反の主張であることを理由に、刑訴法405条の上告理由に当たらないとして棄却したものである。 第1 事案の概要:検察官が判例違反および法令違反を理由として上告を申し立てた事案。検察官は上告趣意において特定の判例を引用…
事件番号: 昭和48(あ)369 / 裁判年月日: 昭和48年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由として主張された判例違反が認められず、その他の主張も刑訴法405条の上告理由に該当しないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた際、弁護人は福岡高等裁判所昭和24年11月2日の判決を引用して判例違反を主張した。あわせて、単なる法令違反および量刑…
事件番号: 昭和45(あ)2007 / 裁判年月日: 昭和48年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣旨の各点は、すべて単なる法令違反を主張するものにすぎず、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に不服を申し立て、最高裁判所に対して上告を行った事案である。上告趣旨において、被告人は原判決における法令の適用や事実誤認等の不当性を主張したが、憲法違反や判例…