「原判決がなんら判断を示していない事項に関する判例違反の主張」で不適法とされた事例
判旨
上告理由として主張された判例違反が、原判決が判断を示していない事項に関するものである場合、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における上告理由としての「判例違反」について、原判決が判断を示していない事項に関する主張が適法な上告理由(刑訴法405条)となるか。
規範
刑事訴訟法405条2号(または3号)に基づく判例違反の上告趣意が適法であるためには、原判決が判断を示した事項と、示された判例の内容との間に矛盾・抵触が認められなければならない。原判決が判断を一切示していない事項について、判例と異なる判断をしたと主張することは、上告理由の前提を欠く。
重要事実
被告人側は、原判決が判例に違反しているとして上告を申し立てた。しかし、その主張において指摘された内容は、原判決が実際には何ら判断を示していない事項に関するものであった。
あてはめ
本件の上告趣意は、原判決が判断を示していない事項に関する判例違反を主張するものである。上告審が審査対象とするのは原判決の判断の当否であるが、判断自体が存在しない事項については、判例との抵触を検討する余地がない。したがって、かかる主張は上告理由としての適格性を欠くといえる。
結論
本件上告は、適法な上告理由に当たらないため、棄却されるべきである。
事件番号: 昭和45(あ)193 / 裁判年月日: 昭和46年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において判例違反を主張する場合、引用される判例は事案を等しくし、かつ有効なものでなければならず、既に変更された判例の引用は適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人(弁護人)は、原判決には判例違反があるとして上告を申し立てた。しかし、その主張の中で引用された判例は、本件とは事案を…
実務上の射程
刑事訴訟の実務において、上告理由を構成する際は、必ず原判決が判断した「判示事項」と判例との抵触を指摘しなければならない。原判決が黙殺した点や判断を回避した点について、判例違反を理由に争うことはできないという実務上の限界を示すものである。
事件番号: 昭和28(あ)4880 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、実質的に憲法違反をいうものであっても刑訴法405条の上告理由には当たらない。また、刑訴法405条が量刑不当を上告理由としていないことは憲法13条等に反しない。 第1 事案の概要:弁護人が憲法違反を理由として上告を提起したが、その主張の実質は、原判決の量刑が不当であるという点に帰す…
事件番号: 昭和26(あ)559 / 裁判年月日: 昭和27年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告適法性の要件として、判例違反を主張する場合には当該判例を具体的に特定する必要があり、その特定を欠く場合やその他の上告理由に該当しない主張は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた際、弁護人が提出した上告趣意書において末尾で「判例違反」に言及していた。しかし、具体的に…
事件番号: 昭和47(あ)789 / 裁判年月日: 昭和47年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反の主張が実質的に判例変更を求めるものである場合や、量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人は、憲法違反および量刑不当を理由として上告を申し立てた。しかし、憲法違反の主張は実質的に従来の最高裁判例の変更を求める内容であり、量刑不当の主張は法定制限…
事件番号: 昭和46(あ)1017 / 裁判年月日: 昭和48年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が判例の具体的摘示を欠く場合や、原審で主張・判断されていない憲法違反をいう場合などは、適法な上告理由にはあたらない。記録上、自白の任意性に疑いがない限り、憲法38条2項違反の主張も認められない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよびそれぞれの弁護人が上告を申し立てた事案である。被告人A…