虚無人名義の文書偽造に関する旧判例が変更されていることが明示された事例
刑法159条
判旨
上告審において判例違反を主張する場合、引用される判例は事案を等しくし、かつ有効なものでなければならず、既に変更された判例の引用は適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
上告審において、既に最高裁によって変更された旧判例との抵触を主張することが、刑事訴訟法405条2号にいう「判例違反」としての適法な上告理由になり得るか。
規範
刑事訴訟法405条2号(判例違反)に基づく上告理由を構成するためには、引用される判例が当該事案において適切である必要がある。特に、最高裁判所の判決によって既に変更された過去の判例を引用することは、判例違反の主張として実質を欠き、適法な上告理由にはあたらない。
重要事実
上告人(弁護人)は、原判決には判例違反があるとして上告を申し立てた。しかし、その主張の中で引用された判例は、本件とは事案を異にするものであった。さらに、引用された判例自体が、昭和26年5月11日の最高裁判所第二小法廷判決(刑集5巻6号1102頁)により既に変更されていた。
あてはめ
弁護人が判例違反の根拠として引用した判例は、本件の事案に即しておらず適切ではない。また、引用された判例は昭和26年の最高裁判決により既に変更されており、現時点で先例としての拘束力を有しないものである。したがって、これと原判決が抵触するとの主張は、単なる法令違反の主張に過ぎず、判例違反という特段の上告理由の構成には至らない。
事件番号: 昭和42(あ)2823 / 裁判年月日: 昭和43年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧大審院判例を変更した昭和25年2月24日最高裁決定を踏襲し、いわゆる「一事不再理の原則」や「罪数論」における既判力の範囲について、先行する確定判決の効力が及ぶ範囲を限定的に解する立場を維持したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、判決文本文には具体的な公訴事実や被…
結論
本件上告は、適法な上告理由(判例違反、違憲等)にあたらないため、刑訴法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
司法試験の答案作成において上告理由を論じる際、判例違反(405条2号)を基礎づけるためには、引用する判例が射程内であること(事案が適切であること)に加え、その判例が現在も有効な先例であることを前提とする必要がある。変更後の新判例がある場合には、新判例との抵触を論じるべきである。
事件番号: 昭和47(あ)1291 / 裁判年月日: 昭和47年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された判例違反が、原判決が判断を示していない事項に関するものである場合、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側は、原判決が判例に違反しているとして上告を申し立てた。しかし、その主張において指摘された内容は、原判決が実際には何ら判断を示していない事項に関するもの…
事件番号: 昭和26(あ)559 / 裁判年月日: 昭和27年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告適法性の要件として、判例違反を主張する場合には当該判例を具体的に特定する必要があり、その特定を欠く場合やその他の上告理由に該当しない主張は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた際、弁護人が提出した上告趣意書において末尾で「判例違反」に言及していた。しかし、具体的に…
事件番号: 昭和26(れ)838 / 裁判年月日: 昭和26年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実質的に刑事訴訟法411条(判決の破棄)の事由を主張するにすぎない上告理由は、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を主張して上告を申し立てた。しかし、その主張の実質は、刑事訴訟法411条が規定する「著しく正義に反すると認めるとき」等の職権破棄事由があることを主張するも…
事件番号: 昭和28(あ)3044 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例違反を理由とする上告において、その前提となる事実が事実審の認定に反する場合には、上告理由として適法なものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が詐欺罪等の罪に問われた事案において、弁護人が判例違反を理由に上告を申し立てた。しかし、弁護人が上告趣意において前提としていた「詐欺の事実」は、原…