判例違反、憲法三八条一項違反の論旨が原判決の認定にそわない事実を前提とするものであるとして不適法とされた事例
憲法38条1項
判旨
取調官による巧妙なトリックや暗示があったとの主張に対し、原判決の認定に沿わない事実を前提とする主張や単なる法令違反・事実誤認の主張は、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
取調官の言動(トリックや暗示)によってなされた自白の証拠能力を争う主張が、刑訴法405条の上告理由(憲法38条1項違反や判例違反)を構成するか。
規範
自白の任意性や真実性に疑義を呈する上告理由については、原判決が認定した事実関係を前提とすべきであり、これに反する事実を前提とする主張や、単なる法令違反・事実誤認の主張は、刑訴法405条所定の上告理由(憲法違反または判例違反)に該当しない。また、職権調査規定である刑訴法411条を適用すべき特段の事情がない限り、原判決は維持される。
重要事実
被告人の自白について、取調官による「巧妙なトリックや暗示」にかかってなされたものであると弁護人が主張し、自白の証拠能力や証明力を争った事案である。しかし、原判決(下級審)は、そのようなトリック等の事実を認めず、自白の証拠能力を肯定していた。
あてはめ
弁護人が主張する「巧妙なトリックや暗示」という事実は、原判決において認定されていない。そのため、この主張は原判決の認定に沿わない事実を前提とするものであり、実質的には単なる事実誤認の主張にすぎないといえる。したがって、憲法違反や判例違反をいう点は、刑訴法405条の上告理由としての適格を欠いている。また、記録を精査しても刑訴法411条により職権で判決を取り消すべき重大な過誤も認められない。
結論
本件各上告を棄却する。弁護人の主張は適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
自白の任意性を争う際、上告審においては原審の事実認定を覆すような主張は困難であることを示している。司法試験においては、自白の任意性の判断基準(虚偽排除説、人権擁護説、違法排除説)を論じる際の前提として、どのような取調べ手法が「不当な心理的強制」にあたるかを検討する文脈で参照し得るが、本決定自体は手続的な門前払いに近い判断であることに注意が必要である。
事件番号: 昭和43(あ)551 / 裁判年月日: 昭和43年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人の同意を経て適法に証拠調べが行われた書証については、伝聞法則等の証拠能力に関する制限を論じるまでもなく、適法な証拠としての資格を有する。 第1 事案の概要:被告人の上告趣意において、証拠調べがなされた各書証について訴訟法違反(伝聞法則違反等)が主張された。しかし、記録によれば、当該各書証はい…