判旨
被告人に累犯加重が適用されるべき事実があるにもかかわらず、原判決がこれを適用しなかった違法がある場合でも、被告人の不利益に判決を変更することは許されないため、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するとは認められない。
問題の所在(論点)
原判決が刑法56条1項、57条の累犯加重規定を適用しなかった違法がある場合に、被告人の申立てにかかる上告審において、当該違法を理由に原判決を破棄すべきか(著しく正義に反するといえるか)。
規範
被告人のみが上告をした場合において、原判決に法令の適用の誤り(累犯加重の不適用等)があるとしても、その破棄が被告人に不利益となる結果を招くときは、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条の趣旨)および上告審の職権破棄の裁量(同法411条)に照らし、直ちに破棄自判・差し戻しを行うべきではない。
重要事実
被告人は、過去に賍物故買および恐喝未遂罪により懲役1年6月および罰金2万円に処せられ、昭和43年3月27日に懲役刑の執行を終えていた。その後、本件各罪を犯したが、原判決は累犯(刑法56条1項、57条)の事実を認めながら、その懲役刑につき累犯加重を適用していなかった。本件は被告人のみが上告した事案である。
あてはめ
本件では、原判決に累犯加重を適用しなかったという明確な法令適用の違法が認められる。しかし、本件上告は被告人の申立てによるものであり、もし累犯加重を適用するために原判決を破棄すれば、被告人にとってより重い刑を科すことになり、不利益変更禁止の原則を潜脱する結果となる。したがって、このような違法が存在したとしても、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
本件上告を棄却する。原判決に累犯加重の不適用という違法があるが、被告人の申立てによる上告審においてこれを破棄する必要はない。
事件番号: 昭和26(れ)1002 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が主張する量刑不当は刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、記録を精査しても同法411条を適用して原判決を破棄すべき事由は認められない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の量刑が重すぎるとして上告を申し立てた事案。具体的な犯罪事実や第一審・控訴審の量刑の内容については、提示された判決文からは…
実務上の射程
不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)の趣旨が、被告人が不利益を恐れずに上告権を行使できるようにすることにある点を確認する判例。検察官が上告していない場合、被告人に不利な法令適用の誤りを是正するために原判決を破棄することは、特段の事情がない限り許されないという実務上の準則を示す。
事件番号: 昭和48(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和48年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人にのみ不利な法令適用の誤りがある場合であっても、被告人が上告した事件においては、不利益変更禁止の原則等の趣旨に鑑み、職権による破棄自判をすべきものとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が量刑不当を理由として上告した事案。第一審判決は、被告人に累犯加重の原因となる前科があることを認めなが…
事件番号: 昭和46(あ)1190 / 裁判年月日: 昭和47年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単独正犯として起訴された事案について、訴因変更の手続を経ることなく共同正犯として認定することは、判決が訴因と異なる事実を認定したものではない場合には許容される。 第1 事案の概要:被告人は単独正犯の訴因により起訴された。原審(控訴審)は、被告人の行為について、訴因変更の手続を経ることなく事実認定を…