判旨
被告人および弁護人が、第一審において証拠とすることに同意した証拠については、作成者に対する審問権を放棄したものとみなされ、憲法37条2項違反の問題は生じない。
問題の所在(論点)
被告人が刑事訴訟法326条に基づき証拠同意をした場合、憲法37条2項(証人審問権)の侵害を主張できるか。証拠同意による審問権放棄の可否が問題となる。
規範
憲法37条2項が保障する証人審問権は、被告人が自らの意思に基づき、証拠とすることに同意することによって、その保障を放棄することが可能である。したがって、適法な証拠同意(刑事訴訟法326条)がなされた場合、当該証拠の作成者等に対する反対尋問の機会が与えられなくても、同憲法条項に違反しない。
重要事実
刑事被告人およびその弁護人が、第一審の公判手続において、検察官が提出した実況見分調書を証拠とすることに同意した。その後、被告人側は、作成者に対する審問権が確保されていないとして、憲法37条2項違反を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、被告人および弁護人は、第一審において問題となっている実況見分調書を証拠とすることに明確な同意を示している。この同意の意思表示は、当該調書の作成者を公判廷に召喚し、反対尋問を行う権利を自発的に行使しないことを選択したもの、すなわち審問権を放棄したものと評価できる。
結論
本件実況見分調書の証拠採用は、被告人による審問権の放棄に基づくものであるから、憲法37条2項違反にはあたらず、上告を棄却する。
実務上の射程
伝聞例外としての証拠同意(刑訴法326条)の憲法的根拠および限界を説明する際に用いる。被告人の権利放棄が認められる以上、同意後に審問権侵害を理由として争うことはできないという信義則的な側面も含む法理である。
事件番号: 昭和46(あ)192 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、被告人が公判審理において証人に尋問し反対尋問する機会を保障するものであり、公判外の供述を証拠とすることを一律に禁止するものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事被告事件において有罪判決を受けた際、公判期日外における第三者の供述等(伝聞証拠)が証拠として採用されたことに対し…
事件番号: 昭和40(あ)1241 / 裁判年月日: 昭和40年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、裁判所に対し被告人側の申請にかかる証人を不必要と思われる者まで悉く尋問することや、必要と認めない者まで職権で喚問することを義務付けるものではない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、控訴審において証人Aの喚問を申請したが却下された。また、証人B、C、Dの3名については、被告人側…
事件番号: 昭和47(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和48年6月5日 / 結論: 棄却
実況見分調書を刑訴法三二一条三項により証拠に採用したときは、その調書に記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨であり、立会人の指示説明をその内容にそう事実認定の証拠として用いる趣旨ではない。