判旨
控訴裁判所が併合罪のうち一部を無罪とした場合であっても、第一審と同一の刑を科すことは刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則に違反しない。
問題の所在(論点)
併合罪として処断された数個の犯罪事実の一部が控訴審で無罪となった場合に、第一審と同一の刑を科すことが刑事訴訟法402条(不利益変更の禁止)に抵触するか。
規範
被告人が控訴し、又は被告人のため控訴した事件については、刑を被告人に不利益に変更することはできない(刑事訴訟法402条)。しかし、複数の罪が併合罪として1つの刑で処罰される場合、そのうち一部が控訴審で無罪になったとしても、宣告される刑が第一審の刑を超えない限り、同条の禁止する不利益な変更には当たらない。
重要事実
第一審判決は、被告人に対し併合罪の関係にある数個の犯罪事実を認め、有罪として一定の刑を科した。これに対し被告人側が控訴したところ、控訴審判決は、第一審が有罪とした事実のうち一部を無罪と判断した。しかし、控訴審は被告人に科すべき刑として、第一審判決と同一の刑を維持した。
あてはめ
不利益変更の禁止(402条)は、第一審の刑よりも重い刑を科すことを禁ずるものである。本件において、控訴裁判所は第一審が有罪とした一部の犯罪事実を無罪としたものの、言い渡した刑の重さ自体は第一審と同一である。不利益か否かの判断は、有罪となった罪数や事実の数ではなく、最終的に宣告される「主文の刑」を基準に比較すべきである。したがって、一部が無罪になったことで実質的に責められるべき内容が減ったとしても、刑の量が変わらない以上、被告人に不利益な変更がなされたとは評価されない。
結論
被告人の一部が無罪となった場合であっても、第一審と同一の刑を科すことは、刑訴法402条に違反しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和43(あ)921 / 裁判年月日: 昭和43年11月14日 / 結論: 棄却
第一審が被告人に対し禁錮一〇月の刑を言い渡したのを第二審が懲役八月に変更しても、第一審判決を被告人に不利益に変更したとはいえない。
併合罪の一部無罪や訴因変更による法定刑の低下が生じた場合でも、最終的な宣告刑が同一であれば不利益変更にあたらないとする実務上の標準的な判断枠組みを示す。答案上は、不利益の判断基準が「刑の種類および量」にあることを指摘する際に活用する。
事件番号: 昭和29(あ)3338 / 裁判年月日: 昭和31年10月9日 / 結論: 棄却
第一審が被告人を禁錮三月(三年間執行猶予)および罰金五千円に処し、右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべき旨の判決を云い渡したのに対して、被告人より控訴の申立があつた場合、控訴審が右第一審判決を破棄し、被告人を罰金三万円に処し、右罰金を完納することができないときは金五百…
事件番号: 昭和44(あ)557 / 裁判年月日: 昭和44年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、裁判所は刑法6条及び10条を適用すべきであるが、判決の文脈から改正前の軽い刑を適用したと解される場合は、当該不備は判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失傷害罪および道路交通法違反の罪に問われた事案において、第一審判決後、業務上過失傷害…
事件番号: 平成17(あ)1680 / 裁判年月日: 平成18年2月27日 / 結論: 棄却
1 第1審判決と控訴審判決の自判部分とが,いずれも懲役刑と罰金刑とを刑法48条1項により併科している場合に,控訴審判決の刑が刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たるかどうかを判断するに当たっては,各判決の主文を全体として総合的に考慮すべきである。 2 第1審の「被告人を懲役1年6月及び罰金7000円に処する…
事件番号: 昭和46(あ)555 / 裁判年月日: 昭和46年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の資料として参酌することは、憲法39条後段が禁じる二重処罰には当たらず、また憲法14条1項の法の下の平等にも違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が被告人の有する前科を量刑上の資料として参酌し、刑を言い渡した。これに対し弁護人は、前科を量刑に…