1 第1審判決と控訴審判決の自判部分とが,いずれも懲役刑と罰金刑とを刑法48条1項により併科している場合に,控訴審判決の刑が刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たるかどうかを判断するに当たっては,各判決の主文を全体として総合的に考慮すべきである。 2 第1審の「被告人を懲役1年6月及び罰金7000円に処する。その罰金を完納することができないときは,金7000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」との判決に対する控訴審の「被告人を懲役1年2月及び罰金1万円に処する。その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。」との判決の刑は,刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たらない。
1 第1審判決と控訴審判決の自判部分とがいずれも懲役刑と罰金刑とを刑法48条1項により併科している場合に控訴審判決の刑が刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たるかどうかを判断する方法 2 刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たらないとされた事例
(1,2につき)刑訴法402条 (1につき)刑法48条1項
判旨
被告人のみが控訴した事件において、併科された刑の重軽を判断する際は、懲役刑と罰金刑(及び労役場留置期間)の主文全体を総合的に比較して実質的に判断すべきである。
問題の所在(論点)
懲役刑と罰金刑が併科されている場合において、一方の刑(罰金)が重くなる一方で他方の刑(懲役)が軽くなったとき、刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則に抵触するか。
規範
刑事訴訟法402条が定める不利益変更禁止の原則における「原判決の刑より重い刑」に当たるか否かは、各判決の主文を全体として総合的に考慮し、実質的に被告人に不利益といえるかによって判断される。
重要事実
事件番号: 昭和29(あ)3338 / 裁判年月日: 昭和31年10月9日 / 結論: 棄却
第一審が被告人を禁錮三月(三年間執行猶予)および罰金五千円に処し、右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべき旨の判決を云い渡したのに対して、被告人より控訴の申立があつた場合、控訴審が右第一審判決を破棄し、被告人を罰金三万円に処し、右罰金を完納することができないときは金五百…
第一審が被告人に対し「懲役1年6月及び罰金7000円(労役場留置換算1日7000円、計1日)」を言い渡したところ、被告人のみが控訴した。原審は第一審を破棄し、「懲役1年2月及び罰金1万円(労役場留置換算1日5000円、計2日)」を言い渡した。罰金額が3000円増加し、労役場留置期間も1日長くなった一方で、懲役刑の刑期は4か月短縮された。
あてはめ
本件では、罰金額が3000円増加し、労役場留置期間が1日延長されており、この点のみを捉えれば被告人に不利な変更といえる。しかし、他方で自由刑である懲役刑の刑期が4か月も短縮されている事実に鑑みれば、刑の全体的な重さを総合的に考慮した場合、実質的に被告人にとって不利益な変更がなされたとは認められない。
結論
本件原判決は「原判決の刑より重い刑」を言い渡したものとはいえず、刑事訴訟法402条に違反しない。
実務上の射程
併科された異種の刑の間で増減がある場合の比較基準を示す。自由刑の短縮という実質的利益が罰金の微増という不利益を上回る場合には、不利益変更にあたらないとする。司法試験の答案作成上、不利益変更の有無は形式的な増減だけでなく、被告人の受ける不利益を全体的・実質的に比較検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(あ)921 / 裁判年月日: 昭和43年11月14日 / 結論: 棄却
第一審が被告人に対し禁錮一〇月の刑を言い渡したのを第二審が懲役八月に変更しても、第一審判決を被告人に不利益に変更したとはいえない。
事件番号: 昭和43(あ)2394 / 裁判年月日: 昭和44年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、異なる種類の刑(懲役と禁錮)を選択した上で刑を併せる場合、同法47条但書の制限を超えて処断することは法令の適用を誤ったものといえる。ただし、宣告刑が不当に重いと認められない限り、直ちに原判決を破棄すべき正義に反する事由(刑訴法411条)には当たらない。 第1 事案の…
事件番号: 昭和46(あ)1872 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最…
事件番号: 昭和38(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和39年5月7日 / 結論: 棄却
第一審が被告人に対し禁錮二年六月の刑を言い渡したのを第二審が懲役二年に変更しても、第一審判決を被告人に不利益に変更したとはいえない。