判旨
同一被告人の同種事件の審理に以前関与したことのある裁判官が、後の別事件の裁判に関与したとしても、憲法や刑訴法に違反して裁判の公正を害するものではない。
問題の所在(論点)
同一被告人の同種事件という過去の職務執行経験がある裁判官が、後の事件に関与することが、憲法37条1項の「公平な裁判所」や刑事訴訟法上の除斥事由等に抵触し、裁判の公正を妨げるか。
規範
裁判官が過去に同一被告人の同種事件の審理に関与した経験があるという事実は、直ちに当該裁判官を当該被告人の別事件の審理から排除すべき理由にはならない。憲法が保障する公平な裁判所の要請や、刑事訴訟法が定める除斥・回避等の規定に抵触するものではない。
重要事実
被告人が、同一の被告人による同種の別事件の審理に以前関与したことのある裁判官が、本件(原判決)の審理に関与したことを捉え、これが憲法および刑事訴訟法の規定に違反するとして上告を申し立てた事案である。
あてはめ
判例(最大判昭和25年4月12日)の趣旨に照らせば、裁判官が過去に同一被告人の別事件に関与したとしても、そのことのみをもって裁判の公平性を失わせる特段の事情とは評価されない。本件においても、単に同種の別事件に関与したという事実があるに過ぎず、不公平な裁判を予断させる客観的事由は認められないため、原判決に憲法・刑訴法違反の瑕疵はないと解される。
結論
同一被告人の同種事件に関与した裁判官が本件に関与しても憲法・刑訴法違反には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法20条各号の除斥事由は限定列挙であり、それ以外の「前審」に当たらない職務執行は原則として除斥の対象外である。本判決は、同種事件の審理経験についても同様の法理が妥当することを認めており、実務上、裁判官の忌避や除斥を主張する際の限界点を示すものとして機能する。
事件番号: 平成16(あ)2716 / 裁判年月日: 平成17年8月30日 / 結論: 棄却
裁判官が公訴棄却の判決をし,又はその判決に至る手続に関与したことは,その手続において再起訴後の第1審で採用された証拠又はそれと実質的に同一の証拠が取り調べられていても,再起訴後の審理において,刑訴法20条7号本文所定の除斥原因に当たらない。
事件番号: 昭和27(あ)3170 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑において被告人の前科を考慮することは、他の諸事情を無視してそれのみを標準とするものでない限り許容される。 第1 事案の概要:被告人が上告し、原判決が被告人の古い前科のみに量刑の標準を置き、その他の事情を無視したものであるとして、判例違反および職権破棄事由(刑訴法411条)を主張した事案である。…