裁判官が公訴棄却の判決をし,又はその判決に至る手続に関与したことは,その手続において再起訴後の第1審で採用された証拠又はそれと実質的に同一の証拠が取り調べられていても,再起訴後の審理において,刑訴法20条7号本文所定の除斥原因に当たらない。
裁判官が公訴棄却の判決をし又はその判決に至る手続に関与したことと再起訴後の審理における刑訴法20条7号本文所定の除斥原因
刑訴法20条7号,刑訴法338条
判旨
裁判官が、公訴棄却の判決に至る手続において証拠調べに関与していたとしても、再起訴後の第1審を担当することは、刑事訴訟法20条の定める裁判官の除斥原因には該当しない。
問題の所在(論点)
裁判官が一度公訴棄却の判決を下した事件について、同一事実での再起訴後に再び第1審の審理を担当することが、刑訴法20条の「前審の裁判」等の関与にあたるか。
規範
刑事訴訟法20条が定める裁判官の除斥事由である「前審の裁判」等への関与とは、当該事件につき後になされた裁判に先立って行われた裁判を指す。公訴棄却の判決およびその判決に至る手続に関与したことは、たとえその手続において再起訴後の第1審で採用された証拠(またはそれと実質的に同一の証拠)が取り調べられていたとしても、「前審の裁判又はその基礎となった取調べ」に関与したものとはいえない。
重要事実
被告人は、公訴提起前の少年法上の手続不備を理由として公訴棄却の判決(前件判決)を受けた。被告人が再起訴された際、前件判決をした裁判所を構成した裁判官と同一の裁判官で構成された裁判所が第1審を担当。前件で取り調べたものと同一の証拠や公判調書等を取り調べた上で有罪判決を言い渡した。弁護人は、これが除斥事由としての前審関与に該当すると主張して上告した。
あてはめ
前件で行われた公訴棄却の判決は、訴訟条件の欠如を理由とする形式裁判であり、実体的な有罪・無罪の判断を下したものではない。したがって、たとえ前件の手続において実体証拠が取り調べられていたとしても、裁判官が再起訴後の審理に関与することは、制度上排除されるべき「前審」への関与にはあたらない。裁判の公正に対する信頼を損なうものでもなく、法が定める除斥原因には該当しないと解される。
結論
本件裁判官の構成は、刑事訴訟法20条の定める除斥原因に該当せず、本件第1審の審理手続に違法はない。
実務上の射程
本判決は、刑訴法20条の「前審」の意義を限定的に解する実務を裏付けるものである。答案上では、予断排除原則(刑訴法256条6項等)との関連で問われることが多いが、条文上の除斥事由に該当するか否かが論点となった場合には、本判決の法理に従い、公訴棄却判決の性質に鑑みて否定的に解すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)2662 / 裁判年月日: 昭和27年9月8日 / 結論: 棄却
裁判官に除斥の事由があれば、その裁判官は当該事件につき当然その職務の執行から排除されるのであつて、これについて敢て裁判を要するものではない(刑訴規則一二条の裁判は、主として当該裁判官が除斥の事由あることを認めない場合に関する規定と解すべきである)。
事件番号: 昭和46(あ)447 / 裁判年月日: 昭和46年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一被告人の同種事件の審理に以前関与したことのある裁判官が、後の別事件の裁判に関与したとしても、憲法や刑訴法に違反して裁判の公正を害するものではない。 第1 事案の概要:被告人が、同一の被告人による同種の別事件の審理に以前関与したことのある裁判官が、本件(原判決)の審理に関与したことを捉え、これが…