一 被告人の勾留場所の變更、勾留更新決定の送達遲延等については、所論のとおり刑事訴訟法の定めている手續が履踐されていないような節がある。しかしながら、かかる點に違法が存するとしても、その是正のためにする不服の道は他にあるのであつて、これをもつて上告申立の理由とすることはできない、なぜならば、かかる違法は、法定の絶對的上告理由に該當しないし、判決に影響を及ぼさざること明白だからである。 二 憲法においても裁判所法においても、裁判所を構成する者は裁判官に限ることは云うを待たぬところであるが、公判の審理は裁判官だけでできるものではなく、又することも許されていない、かく同じく列席しても判事と檢事と裁判所書記は、それぞれ法律で定められた各自の職務を遂行するためのものであることは明白であつて、調書に檢事が裁判官と平列ないし同列に記載されてあつても、それだけのことで裁判に關與し裁判所を構成するものであると云うことはできない。
一 勾留場所の變更、勾留更新決定の送達に關する違法と上告理由 二 調書に檢事が判事と平列ないし同列に記載されていることと裁判所の構成の正否
憲法31條,刑訴法110條,刑訴法456條,刑訴法457條,刑訴法411條,刑訴法60條2號,刑訴法410條1號
判旨
勾留手続の違法は、法定の絶対的上告理由に該当せず、判決に影響を及ぼさないことが明白な場合には上告理由とならない。また、公判調書において検事が裁判官と同列に記載されていても、検事が裁判所を構成するものとはいえない。
問題の所在(論点)
勾留手続における違法や、公判調書上の検察官の記載順序が、判決に影響を及ぼすべき適法な上告理由となるか。
規範
刑事訴訟法上の手続に違法が存在する場合であっても、それが法定の絶対的上告理由に該当せず、かつ判決に影響を及ぼさないことが明白であるときは、上告理由とすることはできない。また、裁判所を構成する者は裁判官に限られるが、公判の審理には検察官や裁判所書記の列席が必要であり、各々が法律に定められた職務を遂行するものである。
重要事実
被告人の勾留について、勾留場所の変更や勾留更新決定の送達遅延等、刑事訴訟法が定める手続が履践されていない疑いがあった。また、公判調書において、判事、検事、裁判所書記が列席した旨の記載があり、かつ判事と検事が同列に記載されていたことから、弁護人はこれらを上告理由として主張した。
あてはめ
勾留手続の違法については、その是正のための不服申立手段は別途存在するものであり、本件のような不備は絶対的上告理由に当たらない。また、当該違法が判決の内容を左右したとはいえず、判決に影響を及ぼさないことが明白である。次に、公判調書の記載について、公判審理に検察官の列席が必要であることは当然であり、記載の順序が裁判官と同列であっても、それは各自の職務遂行の記録に過ぎない。したがって、検事が裁判に関与し、または裁判所を構成する一部となった事実は認められない。
結論
被告人の主張はいずれも上告理由に当たらないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
捜査・公判段階の手続的違法が判決に影響を及ぼさない場合の処理、および裁判所の構成に関する基礎的な解釈を示す。刑事訴訟法上の上告理由の制限(影響性の有無)を論じる際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1812 / 裁判年月日: 昭和27年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決の証拠の一部に証拠能力を欠くなどの違法があっても、その他の適法な証拠によって犯罪事実を十分に認定できる場合には、その違法は判決に影響を及ぼさない。自白の任意性に関する証拠の取捨選択は、経験則に反しない限り原審の専権に属する。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において上告した事案。第一審判決は…