全逓仙台地方貯金局事件
判旨
憲法28条違反をいう上告趣意について、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。
問題の所在(論点)
被告人による憲法28条違反の主張が、刑事訴訟法405条に定める適法な上告理由に該当するか。
規範
最高裁判所への上告理由(刑事訴訟法405条)に関し、憲法違反の主張がなされている場合であっても、その主張の実質が「単なる法令違反」または「事実誤認」に留まるものであれば、適法な上告理由とは認められない。
重要事実
弁護人は、被告人(氏名・属性は判決文からは不明)の行為に関し、憲法28条(労働基本権)違反を理由として上告を申し立てた。しかし、当該主張の内容を精査したところ、憲法解釈の誤りを問うものではなく、下位法令の適用誤りや前提となる事実認定の誤りを実質的な不服とするものであった。
あてはめ
弁護人の主張は、形式的には憲法28条違反を掲げている。しかし、その具体的内容を検討すると、憲法の抽象的な解釈を争うものではなく、事案に対する具体的な法令適用の是非や事実の有無を争う「単なる法令違反、事実誤認」にすぎないといえる。したがって、刑訴法405条各号に規定された、憲法違反または憲法解釈の誤りという厳格な上告理由にはあたらないと評価される。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由にあたらないため、同法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
労働事件等において憲法上の権利を主張する場合であっても、それが事実認定の不服や単なる法令適用の不服とみなされる場合には、上告受理の門前で排斥されるリスクがある。答案作成上は、憲法問題と事実誤認・法令違反の峻別が重要となる。
事件番号: 昭和43(あ)1931 / 裁判年月日: 昭和45年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条違反を主張していても、その実質が事実誤認や単なる法令違反にすぎない場合は、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が、憲法28条(労働基本権)違反を理由として上告を申し立てた。しかし、その趣意書の内容を検討したところ、憲法違反という形式をとってはいるものの…
事件番号: 昭和56(あ)1044 / 裁判年月日: 昭和57年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条、28条、31条違反の主張が、実質的に事実誤認や単なる法令違反をいうものである場合、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、憲法14条(法の下の平等)、28条(労働基本権)、31条(適正手続の保障)違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、…
事件番号: 昭和44(あ)2262 / 裁判年月日: 昭和47年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による上告理由のうち、憲法28条違反の主張は実質的な事実誤認または単なる法令違反にすぎず、判例違反の主張も事案を異にするため、刑訴法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:検察官が、被告人らによる行為の正当性に関する判断に憲法28条(労働基本権)違反および判例違反があるとして上告…
事件番号: 昭和50(あ)1861 / 裁判年月日: 昭和51年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意における憲法違反等の主張が、原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、原判決及び一審判決の判断に、憲法37条1項(被告人の権利)や82条(裁判の公開)の違反、および判例違反があるとして上告を申し立てた事案。しかし、…