所論の被害届(A作成名義)は第一審判示第二の窃盗の事実(注一)につき被告人の自白の補強証拠とするに足りる旨の原判決の判断(注二)は、正当である。 (注一)第一審判示第二の窃盗の事実−「被告人は、昭和四五年六月下旬ころ奈良県橿原市a町b番地A方タイヤ置場において、同人所有の中古普通乗用自動車用タイヤ四本(時価四、〇〇〇円相当)を窃取したものである。」 (注二)原判決の判断−「なお、原判示第二の窃盗の被害者A作成の被害届は所論も指摘する如く、同人が本件被害当時自発的に提出したものでなく、被告人の自供後、その詳細な自白内容に基づき裏付捜査の結果、右被害者より警察当局のいわゆる「未届盗難被害届用紙」の様式に則り作成提出されるに至つたものであることが認められる。しかし、このような経緯で、被告人の自供後、作成提出された被害届であつても、それによつて、自白に照応する盗難被害の事実が認められ、しかも、被害物件の保管場所、保管者、保管方法等、被害物件の盗難前の存在の諸状況が、右自供内容と相俟つて、相当詳細且つ、具体的に特定され得る以上、補強証拠とするに足るものというべく(最高裁判所昭和三二年五月二三日第一小法廷決定参照)採証の妨げとなるものではない。」 〔備考〕 昭和三二年五月二三日の第一小法廷決定は昭和三一年(あ)第三五四三号事件・刑集一一巻五号一五三一頁登載。
窃盗事件につき被告人の自白後に作成された被害届が自白の補強証拠とするに足りるとされた事例
刑訴法319条2項
判旨
窃盗罪において、被害者作成名義の被害届は、被告人の自白に対する補強証拠として適格性を有する。
問題の所在(論点)
被害者作成の被害届は、被告人の自白に対する補強証拠(刑訴法319条2項)となり得るか。
規範
憲法38条3項及び刑訴法319条2項が定める自白の補強証拠は、自白の真実性を担保し、誤判を防止するに足りる証拠であれば足りる。被害者等の第三者によって作成された被害届は、自白から独立した証拠であり、犯罪事実(客観的側面)の存在を裏付ける補強証拠になり得る。
重要事実
被告人が窃盗の事実(第一審判示第二)を自白した。これに対し、被害者A作成名義の被害届が証拠として提出された。弁護人は、当該被害届が自白の補強証拠として不十分である旨を主張し、憲法38条3項違反を訴えて上告した。
あてはめ
本件において提出された被害届(A作成名義)は、被告人の自白とは独立して作成された証拠である。当該被害届は、窃盗の被害があったという客観的事実を裏付ける内容を含んでおり、自白の真実性を担保するに足りるものと解される。したがって、これを補強証拠として採用した原判決の判断は正当である。
結論
被害届は自白の補強証拠として適格であり、憲法38条3項違反は認められない。
実務上の射程
自白の補強法則(刑訴法319条2項)に関する基礎的な判例である。答案上は、補強証拠の必要性の程度(実質説・真実性担保説)に触れた上で、被害届という外部的証拠が「自白から独立した証拠」に当たることを明示して補強証拠として利用する際の根拠とする。
事件番号: 昭和28(あ)3676 / 裁判年月日: 昭和28年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を補強するための証拠として、被害者から提出された被害届書は、適法な証拠調べがなされている限り、自白の補強証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人が犯行を認める自白をしていた事案において、第一審判決は、被害者Aが提出した被害届書を自白の補強証拠として採用した。弁護人は、当該被害届書は補…