死刑事件
判旨
死刑の選択については、犯行の動機、計画性、殺害手段の残虐性、結果の重大性、犯行後の行状、被告人の前科や年齢等の諸般の情状を総合的に考慮し、被告人に有利な事情を参酌してもなおやむを得ないと認められる場合に許される。
問題の所在(論点)
刑事裁判における量刑(特に死刑の選択)において、どのような情状を考慮し、いかなる基準で判断すべきか。いわゆる死刑適用基準(永山基準の先駆けとなる判断枠組み)が問題となる。
規範
死刑を選択するにあたっては、以下の諸要素を総合的に考察し、被告人に有利な情状をすべて参酌しても、極刑が「やむをえない」と認められる必要がある。(1)犯行の動機、(2)凶器準備等の計画性、(3)被害者数および属性(無抵抗の婦女子等)、(4)殺害手段・方法の残虐性、(5)犯行後の行状、(6)前科前歴、(7)犯行時の年齢、(8)生活歴・家庭事情、(9)性格。
重要事実
被告人は、50歳と21歳の無抵抗な婦女子2名を殺害した。犯行には凶器を準備するなどの計画性が認められ、その殺害手段も残虐なものであった。被告人には前科前歴が存在し、犯行後の行状も考慮の対象となった。一方で、被告人の生活歴、家庭の事情、性格など、被告人に有利に働く情状も存在した。
あてはめ
本件では、無抵抗な女性2名を殺害したという結果の重大性に加え、凶器の準備という計画性、および手段の残虐性が認められる。これらに前科や犯行後の状況といった不利な事情を併せれば、被告人の家庭環境や性格といった有利な事情を最大限に考慮したとしても、その責任は極めて重いといえる。したがって、第一審の死刑判決を維持した原判決の判断は、諸般の情状を総合的に考察した結果として、やむを得ないものと評価できる。
結論
事件番号: 昭和45(あ)92 / 裁判年月日: 昭和46年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断は、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢・前科、犯行後の情状等の諸般の事情を慎重に考慮し、やむをえないと認められる場合には許容される。 第1 事案の概要:本件における具体的な犯罪事実は判決文からは不明であるが、原判決は「諸般の事情を慎重に考慮…
被告人に有利な情状をすべて考慮しても、死刑を科した第一審判決を維持することは妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
後の「永山判決」で示される死刑適用基準の先駆けとなった判例である。答案上は、死刑の相当性を論じる際の考慮要素(動機、態様、結果、社会的影響等)を網羅的に列挙するための規範として活用する。
事件番号: 昭和57(あ)303 / 裁判年月日: 平成2年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の計画性、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の役割等を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共謀の上、約1か月の短期間に、何ら落ち度のない女性2…
事件番号: 昭和62(あ)246 / 裁判年月日: 平成4年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、殺害方法の残忍性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合的に考慮すべきであり、情状を酌量しても罪責が重大な場合には死刑が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため、同僚の妻Bから健康保険証を奪って金員を詐取しようと計…
事件番号: 平成8(あ)168 / 裁判年月日: 平成12年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、複数の殺人・強盗殺人事件において、動機・態様・結果の重大性等の諸事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合には、これを是認することができる。 第1 事案の概要:被告人は約6年半の間に、2件の殺人と2件の強盗殺人等を犯した。具体的には、店舗店番の女…
事件番号: 昭和53(あ)787 / 裁判年月日: 昭和55年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人罪における死刑等の量刑判断において、犯行の動機、計画性、殺害手段の残虐性、結果の重大性を重視し、被告人の不遇な生い立ち等の有利な事情を考慮してもなお重刑がやむを得ないと判断される場合には、その科刑は正当である。 第1 事案の概要:被告人は、殺意を持って強盗殺人の犯行に及び、鼻背部割創に基づ…