債権の取立と恐喝未遂罪の成否
刑法249条1項,刑法250条
判旨
債権の取り立てのために行われた恐喝行為であっても、権利行使の手段・方法が社会通念上一般に忍容すべき限度を逸脱した場合には、恐喝罪(または同未遂罪)が成立する。
問題の所在(論点)
正当な債権を有する者が、その債権回収のために相手方を恐喝した場合に、権利行使の正当な範囲内として恐喝罪の成立が否定されるか。権利行使と恐喝罪の成否が問題となる。
規範
権利者が自らの権利を実現する行為であっても、その手段・方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱した場合には、違法性が否定されず、恐喝罪(刑法249条)の成立を免れない。
重要事実
被告人両名は、被害者Aに対して債権を有していたが、その取り立てにあたり、脅迫的な言動を用いて財物の交付を求めた。判決文からは具体的な脅迫態様や被害額等の詳細は不明であるが、原判決の認定によれば、権利行使の手段として社会通念上容認し得ない方法が用いられたことが前提とされている。
あてはめ
本件において被告人らは、債権の取り立てという目的を有していた。しかし、その権利行使の手段・方法に着目すると、社会通念上一般に忍容すべき程度を逸脱していると認められる。したがって、たとえ債権という正当な権利に基づいていたとしても、実力行使の態様が不当である以上、違法性が阻却されることはなく、恐喝罪の構成要件に該当する。
結論
被告人らの行為に対し、恐喝未遂罪の成立を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
自力救済禁止の原則を背景に、権利行使の枠内であっても手段の相当性を厳格に求める判断枠組みである。司法試験においては、債権回収に伴う脅迫・暴行の事案で、手段・方法の相当性を検討する際の規範として定着している。恐喝罪だけでなく、強盗罪や強要罪における権利行使の事案にも広く射程が及ぶ。
事件番号: 昭和39(あ)2421 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 判例違反を主張する所論引用の大正二年(れ)第一二一一号同年一二月二三日大審院判決は、当裁判所の判例によりすでに変更されたものである(昭和二七年(あ)第六五九六号同三〇年一〇月一四日第二小法廷判決、刑集九巻一一号二一七三頁・昭和三一年(あ)第四六九号同三三年五月六日第三小法廷判決、刑集一二巻七号一三三六頁参照)。 二…