東邦製鋼ビラ貼り事件
判旨
労働組合法上の正当な争議行為に該当するか否かは、憲法28条の趣旨を鑑みた具体的な事実関係の評価に基づくものであり、単なる法令違反や事実誤認の主張は適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
労働組合員らによる争議行為が、憲法28条および労働組合法に基づき正当な業務行為(刑法35条)として刑事罰を免れるか否かの判断において、事実誤認や法令違反の主張が刑訴法405条の上告理由として認められるか。
規範
労働組合法上の正当な争議行為としての免責(刑法35条)が認められるためには、その行為の態様、目的、手段が社会通念上相当な範囲内にあることが必要である。憲法28条が保障する団体交渉権・団体行動権の行使としての性質を有するか否かは、具体的な事実関係の評価を通じて判断されるべき事柄である。
重要事実
被告人らの本件行為について、検察官は憲法28条違反を主張して上告した。しかし、その実質的な内容は、被告人らの行為に正当性があるとした原審の事実認定に誤りがあるとする「事実誤認」の主張、および「単なる法令違反」の主張であった。また、引用された判例も本件とは事案を異にするものであった。
あてはめ
検察官の主張は、憲法28条違反という形式をとりつつも、その実態は「被告人らの本件所為の正当性についての事実誤認」にすぎない。これは、最高裁判所が判断すべき憲法解釈の問題ではなく、事実認定の問題である。また、所論の判例引用も事案の同一性を欠くため、判例違反(刑訴法405条2号)の要件も満たさない。さらに、記録を精査しても、職権による破棄事由(刑訴法411条)を適用すべき顕著な不当性は認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由にあたらないため、同法414条、386条1項3号により棄却される。
事件番号: 昭和44(あ)2262 / 裁判年月日: 昭和47年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による上告理由のうち、憲法28条違反の主張は実質的な事実誤認または単なる法令違反にすぎず、判例違反の主張も事案を異にするため、刑訴法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:検察官が、被告人らによる行為の正当性に関する判断に憲法28条(労働基本権)違反および判例違反があるとして上告…
実務上の射程
争議行為の正当性の成否は、事実認定および具体的評価の問題として処理されるべきものであり、憲法28条を直接の根拠とした違憲主張は、実質が事実誤認であれば適法な上告理由とならないことが示唆されている。
事件番号: 昭和46(あ)1380 / 裁判年月日: 昭和48年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、憲法28条違反を主張する点において実質的な法令違反の主張にすぎず、その他の主張も事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:弁護人が憲法28条(労働基本権)違反および事実誤認を理由として上告を申し立てた事案であるが、提出された上告趣意書の内容が憲法…
事件番号: 昭和26(れ)2177 / 裁判年月日: 昭和27年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、事実誤認および量刑不当の主張は刑事訴訟法405条の上告理由に該当しないことを示し、かつ職権破棄事由の存否を判断したものである。 第1 事案の概要:被告人両名の弁護人が、事実誤認および量刑不当を理由として上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):事実誤認および量刑不当の主張が…