不可抗力の主張と刑訴法三三五条二項
刑訴法335条2項
判旨
過失犯の成立において、被告人が通常人より能力が劣るために注意義務の認識や義務の履行が不可能であったか否かは、具体的な事案に応じて判断されるべき問題である。
問題の所在(論点)
過失犯の成立要件として、被告人の個人的能力が通常人より劣る場合に、注意義務の認識可能性や履行可能性がどのように影響するか。
規範
過失犯における注意義務の存否およびその内容については、一般人の能力を基準としつつも、被告人が通常人より能力が劣り、注意義務を認識し得ず、または認識し得たとしても義務履行のために適当な手段を講じることが不可能であった場合には、期待可能性の観点から過失の成立が否定される余地がある。
重要事実
被告人が過失犯に問われた事案において、弁護人は、被告人が通常人より能力が劣るため、過失犯の成立に必要な注意義務を認識できず、あるいは認識できたとしても義務履行が不可能であった旨を主張し、判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件において最高裁は、所論が引用する判例は「被告人が通常人より能力が劣り、過失犯の成立に必要な注意義務を認識し得ず、また、認識し得たとしてもその義務を履行するために適当な手段をとることが不可能であったという主張」に関するものであると指摘。しかし、本件の具体的な事実関係に照らせば、当該判例の事案とは異なると判断した。
結論
被告人の個人的能力の欠如を理由に過失の成立を否定すべきとする主張は、本件の事案には適合せず、上告を棄却する。
実務上の射程
過失の具体的予見可能性や回避可能性を論じる際、被告人の個人的特質(能力の劣等性)が極端な場合には、一般人基準を修正し得ることを示唆する。ただし、実務上は安易に認められるものではなく、事案の個別性が重視される。
事件番号: 昭和31(あ)1187 / 裁判年月日: 昭和33年9月8日 / 結論: 棄却
乗合自動車の運転者が、中学校の正門前附近道路を進行する場合には、前方ならびにその左右を警戒して校門出入者の有無に注意し、その出入者と衝突のおそれがあるときは何時でも停車することができる程度に速度を減少する等事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務がある。