判旨
量刑の判断において、貧富の度合いそのものを基準とすることは許されないが、示談が成立していないという事実を情状の一資料として考慮することは、憲法や法の下の平等に反するものではなく適法である。
問題の所在(論点)
量刑の判断において、被害者との示談が成立していない事実を情状として考慮することは、経済的資力の有無(貧富の度合い)を基準とする不当な差別にあたるか。
規範
刑の量定に際しては、犯人の性格、経歴、犯罪の動機、態様、結果及び社会に与えた影響等の諸般の情状を総合的に考慮すべきである。この点、貧富の格差そのものを刑の軽重の直接の基準とすることは許されないが、被害回復の成否(示談の成否)という客観的事実を、事後の情状として量刑判断の資料に含めることは正当な考慮事項の範囲内である。
重要事実
被告人が刑事事件について起訴された際、原判決は量刑の判断にあたり、被告人と被害者との間で示談が成立していないという事実を情状として考慮した。これに対し、弁護人は、このような判断は実質的に「貧富の度合い」を刑の量定基準にするものであり、不当であるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決は被告人の経済的資力そのものを刑の量定基準に据えたわけではない。あくまで「被害者との示談が成立していない」という客観的な結果を、犯罪後の情状の一資料として評価したに過ぎない。これは被害感情や損害賠償の状況を確認する上で合理的な考慮であり、貧困ゆえに刑を重くしたという趣旨ではないと解される。
結論
示談の未成立を情状として考慮することは適法であり、刑訴法405条の上告理由(または411条の適用が必要な事由)には当たらない。
実務上の射程
事件番号: 昭和54(あ)135 / 裁判年月日: 昭和54年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】示談の成立を量刑の情状として考慮することは、単なる情状の評価にすぎず、被告人の資力による不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において、示談を成立させた事実がある。原判決は、この示談の成立を量刑判断における一つの情状として採用した。これに対し、弁護側は「資力があるために示談…
被告人の経済的資力と量刑の関係が問題となる場面で活用できる。実務上、示談の成否が量刑に大きな影響を与えることを肯定しつつ、それが憲法14条等の「平等原則」に反しないための理論的根拠(示談はあくまで客観的な情状資料であるという構成)として引用される。
事件番号: 昭和41(あ)614 / 裁判年月日: 昭和41年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された刑が、被告人にとって過重であっても、直ちに同条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、第一審および原審は法律の定める範囲内で刑を量定したが、…