昭和四六年法律第九八号による改正前の道路交通法のもとにおいても、中央緑地帯の存する広いa通に狭いb町通が交わる本件事故現場の道路状況(決定書別紙図面および原判文参照)にかんがみれば、a通を東進して来て右折しb町通を南進しようとしていまだa通の中央緑地帯の切れ目にある車両、およびb町通を北から南へ進行しようとしてa通の中央緑地帯の切れ目にある車両は、いずれも、a通を西進する車両の進行を妨げてはならないものと解するのが相当である。
中央緑地帯の存する広い道路に狭い道路が交わる場所において中央緑地帯の切れ目から広い道路の車道を横断しようとする車両がその車道を直進する車両の進行を妨げてはならないとされた事例
道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)35条,道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)36条,道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)37条,道路交通法(昭和46年法律98号による改正後のもの)36条2項
判旨
特殊な交差点構造において優先関係が認められる場合であっても、運転者は他車の動静に注意を払い、事故を未然に防止すべき業務上の注意義務を免れるものではない。
問題の所在(論点)
道路交通法上の優先関係がある場合において、優先車両の運転者に、劣後車両の動静を注視し事故を回避すべき業務上の注意義務が認められるか。
規範
道路交通法上の優先関係が認められる場合であっても、自動車運転者には、道路状況や他車の動静に応じて減速徐行等の中止措置を講じ、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務が課される。優先車両であるからといって、無条件に他車の不適切な進行を看過してよいわけではなく、具体的な状況下で事故回避の可能性があれば、過失責任を負うべきである。
重要事実
被告人Aは、中央緑地帯のある幅員の広い道路を西進していた。一方、被告人Bは同道路を東進して右折し、中央緑地帯の切れ目を通って南進しようとしていた。現場は特殊な交差点であり、常態として南進車(B)が西進車(A)の進行を妨げないよう通行していた。原審はBに優先権があるとしたが、最高裁は道路状況に鑑み、むしろAの車両が優先されるべき(BはAの進行を妨げてはならない)と判断した。その上で、優先車両であるAの運転状況および過失の有無が争点となった。
あてはめ
本件現場の特殊な道路状況においては、南進車であるB車は西進車であるA車の進行を妨げてはならない関係にあった。しかし、被告人Aの車両運転状況を検討すると、B車が自車の進行方向に現れることが予見可能な状況であったといえる。そうであれば、AはB車の動静に意を用い、減速徐行する等の適宜の措置を講じることで事故を未然に防止できたはずである。Aがこれを怠ったことは、運転者に求められる基本的な業務上の注意義務に違反するものと評価される。
結論
被告人Aに優先関係が認められるとしても、他車の動静を注視し事故を回避すべき注意義務を怠った以上、業務上過失致死傷罪の成立を肯定した原判断の結論は正当である。
実務上の射程
信頼の原則の限界を示す事案として位置づけられる。形式的な優先関係のみをもって直ちに注意義務を否定せず、現場の具体的状況から事故回避が可能であったかを重視する実務上の判断指針となる。
事件番号: 昭和43(あ)373 / 裁判年月日: 昭和44年4月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】業務上の注意義務は、他者の異常な行動を予見して自ら危険な回避行動をとることまでを当然に要求するものではなく、回避措置が他の法益を危うくする場合は過失が否定される。 第1 事案の概要:被告人は貨物自動車を運転中、自転車2台を追い越すため道路中央から右側へ50cmはみ出して進行した。その際、前方約34…