車両等が、道路交通法四二条にいう「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの」に進入しようとする場合において、その車両の進行している道路が同法三六条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度(同法二条二〇号)にまで減速する義務があると解しがたいことは、当裁判所の判例とするところである(昭和四二年(あ)第二一一号同四三年七月一六日第三小法廷判決、同四二年(あ)第二八八号同四三年一一月一五日第二小法廷判決各参照)。
道路交通法四二条の徐行義務と同法三六条による優先通行権との関係
道路交通法2条20号,道路交通法36条,道路交通法42条
判旨
交通整理の行われていない左右の見通しのきかない交差点であっても、進行道路が優先道路であるか、交差道路よりも明らかに幅員が広い場合には、道路交通法42条による徐行義務は直ちに課されるものではない。
問題の所在(論点)
交通整理が行われておらず見通しのきかない交差点において、進行する道路が交差する道路よりも明らかに広い場合であっても、一律に道路交通法42条に基づく徐行義務が課されるか。業務上過失致死傷罪における注意義務の内容が問題となる。
規範
道路交通法42条は、交通整理が行われていない見通しのきかない交差点での徐行義務を規定する。しかし、同法36条に基づき、優先道路を通行している場合や、交差する道路よりもその幅員が明らかに広い道路を通行している場合には、優先通行権が認められるため、同条の徐行義務は当然には適用されない。
重要事実
被告人は軽三輪自動車を運転し、幅員約4.2メートルの舗装道路(A道路)を時速約20キロメートルで西進中、見通しのきかない交差点において、左方から幅員約3.3メートルの非舗装道路(B道路)を北進してきたスクーターと衝突した。第一審及び原審は、見通しのきかない交差点ではいかなる場合も徐行すべき業務上の注意義務があるとして、被告人の過失を認めた。
あてはめ
本件交差点において、被告人が進行していたA道路は幅員約4.2メートルの舗装道路であり、他方のB道路は幅員約3.3メートルの非舗装道路であった。被害者が走行していたB道路側の義務(道交法36条2項・3項)違反の可能性が示唆されるなど、被告人の進行路が「明らかに広い道路」に該当する可能性がある。そうであれば、道交法42条の徐行義務は免除されるべきであるが、原審は事実関係を精査せず、一律に徐行義務があるとの前提で過失を認定しており、法令適用の誤り及び審理不尽の違法がある。
結論
優先通行権が認められる可能性のある場合には、見通しのきかない交差点であっても直ちに徐行義務があるとはいえない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
交通事故の過失致死傷罪(現在は自動車運転死傷処罰法)において、道交法上の優先関係は注意義務の有無を左右する重要な判断要素となる。答案上は、まず道交法の優先関係(36条)を確認し、優先側であれば一律の徐行義務(42条)を否定した上で、具体的状況下での予見・回避可能性の有無を論じるべきである。
事件番号: 昭和42(あ)211 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
一 車両等が、道路交通法第四二条にいう「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの」に進入しようとする場合において、その進路が同法第三六条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度にまで減…
事件番号: 昭和62(あ)644 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
車両等が道路交通法四二条一号にいう「左右の見とおしがきかない交差点」に入ろうとする場合には、右車両等の進行している道路がそれと交差する道路に比して幅員が明らかに広いときであつても、徐行義務は免除されない。