違憲の主張が原判決に対する適法な非難とならないとされた事例
判旨
殺人の実行行為において、凶器の形状や攻撃部位等の客観的状況から死の結果発生の可能性を認識・認容していたといえる場合には、未必の殺意が認められる。
問題の所在(論点)
殺意(刑法199条)の存否、特に確定的殺意がない場合であっても、客観的態様から「未必の殺意」を肯定できるか。
規範
殺意の有無は、犯行の動機、凶器の性質、攻撃の部位・回数、攻撃の強さ、犯行後の言動等の客観的事実を総合的に考慮して判断される。特に、死の結果が発生する蓋然性を認識しつつ、それを容認して実行行為に及んだ場合には、未必の殺意が認められる。
重要事実
被告人は、出刃包丁を所携した状態で被害者であるA巡査と対峙した。その際、被告人は当該出刃包丁を用い、人体における枢要部であるA巡査の胸部を突き刺した。弁護側は殺意を否定したが、原審は未必の殺意を肯定し、最高裁もこれを正当と判断した。
あてはめ
被告人が使用した凶器は殺傷能力の高い出刃包丁であり、攻撃を加えた部位は生命維持に直結する胸部であった。このような危険な凶器を用いて枢要部を突き刺す行為は、死の結果を招く危険性が極めて高い。被告人があえてその行為を選択した以上、死の結果が発生することを認識し、かつそれを容認していたと評価するのが合理的である。
結論
被告人に未必の殺意があったと認められるとした原判決の判断は正当であり、殺人罪が成立する。
実務上の射程
殺意の認定において、具体的殺害の意図を自白しない場合でも、凶器の形状や刺突部位といった客観的事実から未必の殺意を導く実務上の典型例を示すものである。答案では「殺意」の要件を検討する際、客観的事実からの推認過程として引用する。
事件番号: 昭和26(れ)2006 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
新憲法施行後においても当裁判所は、有毒飲食物等取締違反被告事件につき、犯罪の構成に必要な事実の認識に欠くるところがなければその事実が法律上禁ぜられていることを知らなかつたとしても、犯意の成立を妨げるものでない旨説示して従前の判例を維持したのである(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷判決)。そしてその後当裁判…
事件番号: 昭和23(れ)2048 / 裁判年月日: 昭和24年11月30日 / 結論: 棄却
一 原判決が證據に舉示した司法警察官の訊問調書及び檢事聴取書中の殺意についての未必の故意の自白は、被告人の供述に基かざる取調官の專恣の録取若は理詰めに因る強制に基く自白であつて、孰れも憲法第三八條第一項及び第二項及び刑訴應急措置法第一〇條第一項第二項に依り證據となし得ないものであると主張する。記録を精査するに被告人は第…
事件番号: 昭和25(れ)1390 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の間で殺害の意思が連絡し、互いに殺意をもって凶器で攻撃を加えた場合、実行行為の途中で一部の行為を制止したとしても、当初からの殺意や共謀の成立は否定されない。 第1 事案の概要:被告人Aは、Bとともに被害者C及びDを発見した際、両名を殺害しようと決意して互いに意思を通じ、所持していた日本刀を用…