氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、届出人たる選任者が、その氏名の記載のない届出書面によつてした代理人選任は、無効である。
氏名の記載のない届出書面によつてなされた代理人選任の効力
法廷等の秩序維持に関する規則13条2項
判旨
法廷等の秩序維持に関する規則に基づく代理人選任届には、氏名を記載できない合理的な理由がない限り、選任者の氏名記載を要し、氏名不詳のまま指印のみがなされた選任書による抗告は不適法である。
問題の所在(論点)
法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁に対する抗告において、代理人選任書に本人の氏名記載を欠き、指印のみがなされている場合に、適法な代理人の選任として認められるか。
規範
法廷等の秩序維持に関する規則19条、13条2項に基づく代理人の選任は書面で届け出なければならないが、当該書面には少なくとも選任者がその氏名を記載することを要する。ただし、氏名を記載することができない合理的な理由がある場合は例外となり得る。
重要事実
抗告人(氏名不詳者)は、監置決定に対して弁護士を代理人として特別抗告を申し立てた。しかし、提出された代理人選任書には、氏名欄に「中央三十九号監置一号」という符牒のような記載と指印があるのみで、本人の氏名の記載を欠いていた。また、記録上、氏名を記載することができない合理的な理由は見当たらなかった。
事件番号: 昭和43(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和43年5月1日 / 結論: 棄却
法廷等の秩序維持に関する法律による制裁の裁判に対し、氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、抗告人を氏名不詳者と表示してその氏名を記載していない申立書によつてした抗告申立は不適法である。
あてはめ
本件では、代理人選任書に「中央三十九号監置一号」との表示と指印があるのみで氏名の記載がない。規則13条2項が書面による届出を求めている趣旨からすれば、選任者の特定のために氏名記載は不可欠である。本件において氏名を記載できない合理的な理由は認められないため、形式的要件を欠く。したがって、当該選任書による代理人選任は不適法であり、その代理人名義による抗告申立もまた不適法となる。
結論
本件抗告申立は不適法であるため、棄却を免れない。
実務上の射程
裁判手続における書面主義の厳格性を認めたものであり、代理人選任の有効性は本人特定の明確性にかかっていることを示している。氏名不詳のまま「指印」等で代用することは、合理的な理由(身体的障害等)がない限り認められないため、実務上の委任状作成においては厳格な氏名記載が要求される。
事件番号: 昭和51(秩ち)3 / 裁判年月日: 昭和51年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく特別抗告において、氏名を記載できない合理的な理由がないにもかかわらず、氏名の記載を欠く申立書による抗告は不適法である。 第1 事案の概要:本件申立人は、法廷等の秩序維持に関する法律による制裁の裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。その際、申立人は申立書の…
事件番号: 昭和60(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和60年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁手続は、通常の刑事裁判の手続とは異なる簡易なものであるが、憲法31条等の刑事手続上の保障が及ばないわけではなく、その趣旨に反しない限度で適憲とされる。本法による監置決定は、裁判官の面前等で行われた秩序を乱す言動に対し、法廷の尊厳と審判の適正を確保するために行…
事件番号: 昭和49(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和49年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する規則に基づく抗告において、原決定の憲法違反を主張する場合には、具体的な理由の提示が必要であり、これを欠く抗告は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法31条(適正手続き)および34条(抑留・拘禁に関する権利)に違反する旨を主張して抗告を申し立…
事件番号: 昭和40(し)102 / 裁判年月日: 昭和41年2月3日 / 結論: 棄却
一 本件について差し出された抗告申立書には「氏名不詳一九六五年七月九日から七月一六日まで名古屋拘置所一階三五房三七九号の男」という記載があるだけであつて、被告人の署名は存在しない。 二 被告人の氏名について、黙秘権がないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日判決、集一一巻二号八〇二頁…