いわゆる岡山県農機具公社事件上告棄却決定
判旨
本決定は、背任罪における図利加害目的の認定に関し、任務違背の認識があったことを前提とする原判決の認定を支持し、上告を棄却したものである。
問題の所在(論点)
被告人らが「任務違背の認識」を欠いていたと主張する場合において、原判決の認定に反する事実を前提とした上告趣意が適法な上告理由となるか。
規範
背任罪(刑法247条)の成立には、主観的要件として、自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的(図利加害目的)および任務違背の認識が必要である。
重要事実
被告人A、B、Dらは、任務違背の認識がないことを理由に背任罪の不成立を主張して上告した。しかし、原判決(下級審)においては、被告人らには任務違背の認識があったものと事実認定されていた。
あてはめ
本件において、被告人らは自らに任務違背の認識がなかったことを前提に判例違反等を主張するが、原判決は既に任務違背の認識があったと肯定的に認定している。このように、原判決の認定しない事実を前提とする主張は、刑訴法上の適法な上告理由(判例違反や憲法違反)にはあたらないと解される。
結論
被告人らの主張は単なる法令違反や事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由にあたらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
背任罪の故意(任務違背の認識)の有無は事実認定の問題であり、上告審においてこれを争うには、原判決の事実認定自体に不合理な点があることを具体的に示す必要がある。答案上は、背任罪の主観的要件を論じる際の前提として、図利加害目的と任務違背の認識の両面が必要であることを示す際に参照しうる。
事件番号: 昭和57(あ)671 / 裁判年月日: 昭和60年4月3日 / 結論: 棄却
信用組合の専務理事である被告人が、自ら所管する貸付事務について、貸付金の回収が危ぶまれる状態にあることを熟知しながら、無担保あるいは不十分な担保で貸付を実行する手続をとつた本件行為は、それが決裁権を有する理事長の決定・指示によるものであり、被告人がその貸付について理事長に対し反対意見を具申したという事情があつたとしても…