村長が、給与所得を有する村民税納税義務者に対する所得割の賦課に際し、村条例の規定にしたがった課税総所得金額の算定をせず、村条例になんら規定がないのに、総収入金額から、それが一〇〇万円以下のものについてはその三九パーセントにあたる金額を、それが一〇〇万円をこえるものについては三九万円を、それぞれ控除し、それに相応する額の過少賦課をしたうえ、同額の過少徴収をすることは、法令上許されず、村長の任務に違背する行為である。
村長が給与所得者に対し村民税の過少賦課徴収をしたことが背任行為にあたるとされた事例
刑法247条,地方税法(昭和39年法律29号による改正前のもの)313条1項,地方税法(昭和39年法律29号による改正前のもの)313条2項,地方税法(昭和39年法律29号による改正前のもの)314条の2第1項,地方税法(昭和39年法律29号による改正前のもの)3条1項,所得税法(昭和22年法律27号)9条1項(昭和39年法律20号による改正前のもの)
判旨
村長が、村条例に規定のない独自の控除基準を適用して村民税を過少に賦課・徴収した行為は、法令上許されない行為であり、刑法上の背任罪における「任務違背行為」に該当する。
問題の所在(論点)
村長が条例に基づかず独自の基準で税額を減免する行為が、背任罪における「任務に背く行為」に該当するか。
規範
背任罪(刑法247条)の要件である「任務に背く行為」(任務違背行為)とは、事務の委任の趣旨、法律の規定、または信義則に照らし、本来なすべきものと期待される行為をしないこと、あるいはなすべきでない行為をすることをいう。地方公務員が公金に関する事務を行う際、法令や条例に反して財産的損害を生じさせた場合は、原則として任務違背性が認められる。
重要事実
北海道空知郡a村の村長であった被告人は、給与所得を有する村民税納税義務者381名に対する昭和38年度所得割の賦課に際し、本来適用すべき同村条例の規定に従わなかった。被告人は、条例に何ら規定がないにもかかわらず、総収入金額が100万円以下の場合は39%を、100万円を超える場合は39万円を控除するという独自の基準を用いて課税総所得金額を算定した。その結果、合計77万3800円の過少賦課を行い、同額の過少徴収をした。
事件番号: 昭和32(あ)1074 / 裁判年月日: 昭和34年8月8日 / 結論: 棄却
村長が特定の個人の選挙運動資金を村費から支出するため、該個人の利益を図り、道路改修工事補助金名下に実際の所要経費に右運動資金所要見込額を水増した内容不実の歳出追加更正予算案(道路修繕維持費)を発案し、その旨あらかじめ村議会協議会において村議会議員に諮議しその無修正可決につき諒解を得た上右予算案を村議会本会議に提出し、所…
あてはめ
被告人は村長として、村条例に従い適正に地方税を賦課・徴収すべき職務上の義務を負っていた。しかし、被告人は条例に根拠のない控除基準を勝手に適用しており、これは租税法律主義の観点からも法令上許されない行為である。条例に従って算定すべき課税所得を不当に低く見積もり、本来徴収すべき税収を減少させたことは、事務の委任の趣旨に明らかに反しており、その任務に違背したものであると評価される。これにより村に財産上の損害(徴収不能となった税収相当額)を与えたといえる。
結論
被告人の行為は任務違背行為にあたり、背任罪が成立するとした原審の判断は相当である。
実務上の射程
地方自治体の首長等が、温情や独自の政策的判断として行う法令・条例違反の税額免除や公金支出について、背任罪の任務違背性を肯定する際の根拠として活用できる。図利加害目的や損害の発生とあわせて、職務権限の逸脱・濫用を基礎づける事実として本判例の論理が参考になる。
事件番号: 昭和57(あ)671 / 裁判年月日: 昭和60年4月3日 / 結論: 棄却
信用組合の専務理事である被告人が、自ら所管する貸付事務について、貸付金の回収が危ぶまれる状態にあることを熟知しながら、無担保あるいは不十分な担保で貸付を実行する手続をとつた本件行為は、それが決裁権を有する理事長の決定・指示によるものであり、被告人がその貸付について理事長に対し反対意見を具申したという事情があつたとしても…