村長が特定の個人の選挙運動資金を村費から支出するため、該個人の利益を図り、道路改修工事補助金名下に実際の所要経費に右運動資金所要見込額を水増した内容不実の歳出追加更正予算案(道路修繕維持費)を発案し、その旨あらかじめ村議会協議会において村議会議員に諮議しその無修正可決につき諒解を得た上右予算案を村議会本会議に提出し、所期のとおりその議決を得た後、村収入役代理に対し右予算に基き道路改修工事補助金支払名義をもつて前記運動資金所要見込額相当の金員の支出を命令し、これを右資金保管者に対し村公金中から支払わせて村に同額の財産上の損害を加えたときは、村長の任務に違背し、背任罪が成立する。
背任罪の成立する事例。
刑法247条
判旨
村長が特定の個人の選挙資金を村費から支出する目的で、虚偽の予算案を編成して議会の議決を得、それに基づき支出命令を行った場合、背任罪が成立する。
問題の所在(論点)
村長が予算案の編成・提出、および議決に基づく支出命令を行った行為について、背任罪(刑法247条)の「任務に背く行為」といえるか。
規範
村長は村の執行機関として事務を誠実に管理・執行する義務を負う(地方自治法138条の2)。予算の発案・提出権限(同法149条等)や、議決に異議がある場合の再議付議権(同法176条等)等を有することに鑑みれば、①特定の個人の利益を図る目的で不実の予算案を提出し、村議会の議決権行使を誤らせて不当な財政負担をもたらす原因を作る行為、および②議決の内容が不当であることを知りながら是正措置を講ぜず、計画に従い支出を命令する行為は、いずれも任務違背行為に当たる。
重要事実
A村の村長である被告人は、同村出身の県議会議員Bの選挙運動資金を村費から支出することを企てた。被告人は村議会議員らに諮議して了解を得た上で、道路維持修繕補助金の名目でBの運動資金20万円を水増しした追加予算案を提出・可決させた。その後、被告人は収入役代理に対し、補助金支払名義で合計20万円の支出命令をなし、保管者に村公金を支払わせて村に同額の損害を与えた。
事件番号: 昭和32(あ)938 / 裁判年月日: 昭和35年6月6日 / 結論: 棄却
農業協同組合の役員が、組合員外の非法人たる河川改修準備委員会に対し、仮払金名義の下に同組合保管金中の一部の金員を貸し付ける所為は、農業協同組合法第九九条違反の罪を構成する。
あてはめ
被告人は、特定の個人の選挙運動資金を捻出するという村の事務とは無関係な私的目的(図利目的)を有していた。まず、実際には不要な経費を水増しした内容不実の予算案を編成・提出した点は、村議会を欺いて不当な財政負担の原因を作るものであり、発案段階で既に任務違背が認められる。さらに、予算議決後も、再議に付すなどの是正措置が可能であったにもかかわらず、不当な内容を承知で支出命令を継続した点は、予算執行における誠実な管理義務に著しく反する。これにより、村に20万円の損害を発生させており、一連の行為は背任罪を構成する。
結論
被告人の行為は、第三者Bの利益を図る目的でなされた任務違背行為であり、村に損害を与えたため、背任罪が成立する。
実務上の射程
地方自治体の首長による公金支出を伴う不正行為において、議会の議決を経ていることが任務違背を否定する事由にはならないことを示した。予算編成から執行に至るまでの各段階における首長の広範な裁量と義務を根拠に、形式的に適法な手続きを装った実質的な公金流用を背任罪として捕捉する際のスタンダードとなる。
事件番号: 昭和44(あ)10 / 裁判年月日: 昭和47年3月2日 / 結論: 棄却
村長が、給与所得を有する村民税納税義務者に対する所得割の賦課に際し、村条例の規定にしたがった課税総所得金額の算定をせず、村条例になんら規定がないのに、総収入金額から、それが一〇〇万円以下のものについてはその三九パーセントにあたる金額を、それが一〇〇万円をこえるものについては三九万円を、それぞれ控除し、それに相応する額の…