判旨
同一の租税逋脱行為に対し、重加算税を課した上で更に行政罰としての刑罰を科すことは、憲法39条の二重処罰の禁止に違反しない。
問題の所在(論点)
同一の租税逋脱行為に対し、地方税法に基づく重加算税の賦課と刑事罰の科刑を併せて行うことが、憲法39条の二重処罰の禁止に抵触するか。
規範
憲法39条が禁止する「二重処罰」とは、同一の行為に対して刑事上の責任を二度問うことを意味する。これに対し、行政上の義務違反に対する制裁として課される重加算税は、行政上の目的に基づく金銭的負担であり、本質的に刑事罰とはその性質を異にする。したがって、両者を併科することは、実質的に同一の処罰を二度繰り返すものとはいえず、同条に違反しない。
重要事実
被告人は、地方税法に規定される租税逋脱行為を行った。これに対し、行政当局は地方税法128条に基づき「重加算税」を課した。さらに、検察官は当該行為を犯罪として起訴し、地方税法122条1項に基づく「刑罰」を求めた。弁護人は、同一の行為に対して重加算税と刑事罰の双方を課すことは、憲法39条が禁じる二重処罰に該当し違憲であると主張した。
あてはめ
本件における重加算税の賦課は、適正な申告・納税義務の履行を確保するという行政上の目的を達成するための制裁である。一方で、地方税法122条1項による刑罰は、社会悪としての逋脱行為そのものに対する反社会的・道義的非難を背景とした刑事上の制裁である。このように、両制裁は目的および性質を異にする。したがって、同一の行為を対象としていても、刑事上の責任を重ねて問うていることにはならないため、二重処罰には当たらないと解される。
結論
同一の租税逋脱行為に対し、重加算税に加えて刑罰を科しても、憲法39条に違反しない。
実務上の射程
行政上の制裁(過料・加算税等)と刑事罰の併科の合憲性が問われる事案全般に適用される。特に租税犯の答案において、二重処罰の成否が争点となる場合の規範として機能する。
事件番号: 昭和45(あ)884 / 裁判年月日: 昭和45年10月8日 / 結論: 棄却
同一の租税逋脱行為について重加算税のほかに刑罰たる罰金を科しても憲法三九条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日判決、民集一二巻六号九三八頁)の趣旨に徴して肯認しうるところである。