同一の租税逋脱行為について国税通則法六八条の重加算税のほかに刑罰を科しても、憲法三九条に違反しない。
国税通則法六八条の重加算税のほかに刑罰を科することと憲法三九条
国税通則法68条,所得税法(昭和40年法律33号による改正前のもの)69条,憲法39条
判旨
重加算税は徴税の実現を目的とする行政上の措置であり、反社会性等に対する制裁である刑罰とは趣旨・性質を異にするため、同一の租税逋脱行為に併科しても憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
同一の租税逋脱行為に対し、行政上の措置である重加算税を課した上で刑事罰を科すことが、憲法39条の二重処罰の禁止に抵触するか。また、脱税額を基準とする罰金額の特定性や重加算税との合算による負担が憲法31条の適正手続・罪刑法定主義に反するか。
規範
憲法39条が禁じる二重処罰とは、刑事上の責任を問う刑罰を重ねて科すことを指す。行政上の措置である重加算税と、刑事罰である罰金は、その趣旨・性質において以下の通り区別される。1.重加算税:課税要件事実の隠蔽・仮装に対し、行政手続により課されるもので、納税義務違反の発生防止と徴税の確保を目的とする行政上の措置。2.刑罰:違反者の不正行為の反社会性・反道徳性に着目し、これに対する制裁として科されるもの。両者は目的・性質が異なるため、併科が可能である。
重要事実
被告人は、昭和40年改正前の所得税法に違反し、所得税を免れたとして刑事訴追を受けた。被告人は、当該租税逋脱行為について行政上の措置である重加算税を課されるほかに刑事罰としての罰金を科されることは、同一の行為について重ねて刑事上の責任を問うものであり、憲法39条(二重処罰の禁止)に違反すると主張した。また、罰金の最高限度額が脱税額に応じて定まる仕組みや、重加算税との合算額が高額になることが憲法31条に違反するとも主張し、上告した。
あてはめ
まず、重加算税は国税通則法に基づき、隠蔽・仮装という客観的態様に対して機械的に課される行政手続であり、徴税の効率化という行政目的を有する。これに対し刑事罰は、行為者の道徳的非難を基礎とする制裁である。したがって、両者は性質を異にし、併科しても憲法39条には反しない。次に、罰金額の特定性については、免れた所得税額という客観的基準が裁判において認定されることで特定されるため、不明確とはいえない。さらに、刑罰の重さについては、罰金刑に下限がなく情状により柔軟な量定が可能である以上、法規定自体が著しく過酷で不当なもの(憲法31条違反)とは評価できない。
結論
租税逋脱に対する重加算税と刑罰の併科は、憲法39条に違反しない。また、脱税額に比例する罰金規定も憲法31条に違反せず、合憲である。
実務上の射程
行政罰(過料等)や行政上の制裁金と刑事罰の併科が問題となる事案全般におけるリーディングケースである。答案上は、両者の「趣旨・性質」を比較し、一方が「行政目的達成のための手段」であり、他方が「反社会性に対する制裁」であることを対比させて二重処罰の禁止の射程外であることを論じる際の規範として活用する。
事件番号: 昭和52(あ)1222 / 裁判年月日: 昭和53年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】延滞税や加算税等の行政上の制裁と刑罰の併科は、憲法39条が禁止する二重の処罰には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、租税法違反等の罪に問われた刑事裁判において、既に延滞税、過少申告加算税、および重加算税を課されていることを理由に、さらに刑罰を科すことは憲法39条の二重処罰禁止の規定に違反する…