刑法二〇〇条は、憲法一四条一項に違反する。
刑法二〇〇条と憲法一四条一項
憲法14条1項,刑法199条,刑法200条
判旨
尊属殺を普通殺と区別して重く処罰すること自体は直ちに違憲とはいえないが、その法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点は、立法目的達成のために必要な限度を超え、憲法14条1項に違反して無効である。
問題の所在(論点)
刑法200条が尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役のみに限定し、普通殺(刑法199条)と比較して著しく重く規定していることが、憲法14条1項の平等原則に違反し無効ではないか。
規範
法の下の平等を定める憲法14条1項は、絶対的平等を意味するものではなく、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づく差別的取扱いは許容される。もっとも、尊属殺という特別の罪を設けて刑を加重すること自体は合理的根拠があるといえるが、その加重の程度が、立法目的達成のために必要な限度を遥かに超えて著しく不合理な差別となっている場合には、同条項に違反し無効となる。
重要事実
被告人は、幼いころから養父(被害者)に養育されてきたが、夫の不貞問題に悩み自殺を決意した。被告人は、一人暮らしで高齢かつ酒癖の悪い養父が自分の死後に他人に迷惑をかけることを憂慮し、養父を道連れにして自殺しようと考えた。被告人は、養父に嘘を言って睡眠薬を飲ませて無抵抗にした上、腰紐で窒息死させて殺害した。原審は、この行為に対し刑法200条(尊属殺)を適用した。
あてはめ
尊属殺の加重規定は、卑属の尊属に対する尊重報恩という道徳的要請に基づくものであり、その立法目的自体には合理的な根拠が認められる。しかし、刑法200条の法定刑は死刑または無期懲役のみであり、執行猶予の付与が困難(刑の減軽を重ねてもなお困難)である等、普通殺の法定刑に比して著しく厳しい。本件のような心中目的や不遇な境遇など、酌むべき事情がある事案においても一律に極めて重い刑を課すことは、立法目的達成のために必要な限度を遥かに超えている。したがって、当該加重の程度は著しく不合理であり、正当化できない。
結論
刑法200条は憲法14条1項に違反して無効である。よって、尊属殺に対しても刑法199条を適用すべきであり、原判決は破棄される。被告人は、心神耗弱による減軽等を経て、懲役2年6月に処せられる。
実務上の射程
司法試験においては、平等原則の違憲審査基準(目的の正当性・手段の合理性/必要性)の典型例として引用する。特に「差別そのものは許容されるが、差別の程度(手段)が不合理」という二段構えの論法は、本罪以外の身分による加重規定を検討する際にも極めて重要となる。
事件番号: 昭和44(あ)916 / 裁判年月日: 昭和48年4月4日 / 結論: 破棄自判
刑法二〇〇条は、憲法一四条一項に違反する。