判旨
不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、単なる拘束期間の長短のみならず、事案の内容や手続の経過、その他諸般の事情を総合的に勘案して判断される。
問題の所在(論点)
逮捕・勾留から約45日が経過した後の公判廷における自白が、憲法38条2項及び刑訴法319条1項にいう「不当に長い拘禁後の自白」に該当し、証拠能力を欠くことになるか。
規範
「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」として証拠能力が否定されるかは、拘禁の期間だけでなく、事案の性質、手続の進行状況、その他諸般の事情を総合的に考慮し、その自白が自由な意思に基づいてなされたものと認められるかという観点から判断すべきである。
重要事実
被告人は、昭和45年5月4日に逮捕され、同月7日に勾留状の執行を受けた。その後、同年6月19日の第一審裁判所における第1回公判期日に至るまで身拘束を受けていたが、その公判廷において犯行を自白した。
あてはめ
本件における約45日間の拘禁期間は、事案の内容や手続の経過(第1回公判期日での自白であること等)に照らせば、直ちに不当に長いものとは評価できない。また、公判廷という公開された場所での自白である点を含め、諸般の事情を総合すれば、当該自白が不当な抑圧下でなされたものとは認められない。
結論
本件の自白は不当に長い拘禁後の自白にはあたらず、証拠能力は認められる。したがって、憲法38条2項違反の主張には理由がない。
実務上の射程
拘禁期間が刑事訴訟法の定める期間内であれば、原則として本規定には該当しないことを示唆する。実務上は、期間の長短だけでなく、その間の取調べの態様や自白に至る経緯に任意性を疑わせる事情があるかという視点で活用される。
事件番号: 昭和25(あ)1096 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項にいう「不当に長い拘禁後の自白」に該当するか否かは、単なる期間の長短だけでなく、事案の軽重、審判の難易、罪証隠滅の危険等の諸般の事情を総合考慮し、その拘禁が必要な限度を超えていたかにより判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、第一の事実により起訴され、罪証隠滅の疑いがあるとし…
事件番号: 昭和26(あ)88 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
記録によると、被告人Aは昭和二四年九月二〇日恐喝未遂事件(原判決判示第一の(一)の事実)の嫌疑により勾留状の執行を受け、名古屋拘置所代用監獄起町警察署に勾留されたのであるが、本件が複雑で関係者多数のため取調困難という理由で同年一〇月九日まで勾留期間が延期され、その期間終了の前日である同月八日右恐喝未遂事件で起訴せられた…