判旨
前科を有し刑の執行を受けた事実を考慮して有罪とすることは、不当な差別には当たらず、法の下の平等に反しない。また、供述調書の信用性や事実誤認の有無は、最高裁判所において適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 被告人の前科や刑の執行事実を考慮して有罪とすることが、憲法第14条の法の下の平等に違反するか。2. 供述調書の信用性や事実誤認等の主張が、刑訴法第405条所定の適法な上告理由に当たるか。
規範
日本国憲法第14条が規定する法の下の平等は、合理的な根拠のない不当な差別を禁ずるものである。また、刑事訴訟法第405条において、最高裁判所への上告理由は、憲法違反、憲法解釈の誤り、または最高裁判所若しくは大審院の判例と相反する判断をしたことに限定される。事実誤認、単なる法令違反、または量刑不当の主張は、原則として適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人は、原判決において有罪判決を受けたが、これに対し上告を申し立てた。弁護人は、原判決が「被告人が前科を有し刑の執行を受けたものであるという理由」で一般国民と差別して有罪としたものであり、憲法に違反すると主張した。また、被告人本人は、供述調書の信用性、事実誤認、単なる法令違反および量刑不当を主張した。
あてはめ
1. 憲法違反の点について、記録を精査しても原判決が「被告人の前科や執行歴のみを理由として差別し有罪とした」事実は認められない。したがって、弁護人の主張は前提を欠いている。2. その他の主張について、供述調書の信用性を疑わせる資料は存在せず、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張は、いずれも刑訴法第405条の上告理由に該当しない事項である。また、刑訴法第411条を適用して職権で判決を取り消すべき顕著な正義に反する事由も認められない。
結論
本件上告には適法な上告理由が含まれていないため、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法14条違反を上告理由とする場合でも、原判決が不当な差別を行っているという具体的かつ客観的な事実がなければ、前提を欠くものとして退けられる。また、事実認定に関する不服は控訴審までで争うべきであり、上告審では原則として上告理由にならないという実務上の鉄則を確認するものである。
事件番号: 昭和27(あ)5634 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条所定の上告理由に当たらない事項、及び原審で主張判断のない事項に基づく違憲の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、証拠書類に署名捺印を欠いている等の事由を挙げ、事実誤認を前提とする憲法違反、訴訟法違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた。…