判旨
証人が公判期日において証言を拒絶した場合、当該証人が検察官の面前で供述した内容を録取した書面を証拠とすることは、憲法37条2項および38条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
証人が公判廷において証言を拒絶した場合に、当該証人の検察官面前調書を証拠とすることが、被告人の証人尋問権(憲法37条2項)および自己負罪拒否特権(憲法38条1項)に抵触し、伝聞法則の例外(刑訴法321条1項2号)として許容されるか。
規範
公判期日において証人が証言を拒絶し、実質的に「供述することができないとき」に準ずる状態にある場合、その者が検察官の面前でした供述を録取した書面を証拠とすることは、憲法の保障する反対尋問権等の趣旨に反するものではない。これは、供述の不能性という必要性と、検察官面前という状況的保障に基づき、証拠能力を認める趣旨である。
重要事実
被告人の公訴事実につき、証人AおよびBが第一審公判廷において証言を拒絶した。裁判所は、両名の検察官に対する供述調書を証拠として採用し、有罪判決の基礎とした。弁護人は、これが証言拒絶の事実を被告人に不利益に用いるものであり、憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、証人AおよびBが第一審公判廷において証言を拒絶している。このように公判廷で証言が得られない場合、過去に作成された検察官面前調書のうち、証言拒絶された部分に対応する供述内容を証拠として採用することは適法である。第一審判決は、単に証言を拒絶したという事実をもって被告人の犯罪事実を推認したのではなく、拒絶された部分を除くその他の供述部分を採用し、他の証拠と総合して事実認定を行っている。したがって、憲法が保障する適正手続や証人尋問権を侵害するような不合理な推認や証拠の採用は認められない。
結論
証人が証言を拒絶した場合にその検察官面前調書を証拠とすることは、憲法37条2項および38条1項に違反せず、適法である。
実務上の射程
刑訴法321条1項2号後段の「供述することができないとき」には、死亡や病気だけでなく、証言拒絶権の行使等により実質的に供述が得られない場合も含まれることを前提とする実務上の準則を確認したものである。
事件番号: 昭和29(あ)1164 / 裁判年月日: 昭和30年1月11日 / 結論: 棄却
一 刑訴第三二一条第一項第二号後段の調書の証拠調をその証人尋問期日の後の期日に行つたところで憲法第三七条第二項に反しない。 二 同号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の情況」は必ずしも外部的な特別の事情によらなくても、その供述の内容自体によつて判断することができる。