一 刑訴第三二一条第一項第二号後段の調書の証拠調をその証人尋問期日の後の期日に行つたところで憲法第三七条第二項に反しない。 二 同号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の情況」は必ずしも外部的な特別の事情によらなくても、その供述の内容自体によつて判断することができる。
一 刑訴第三二一条第一項第二号後段の調書の取調時期 二 同号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の状況」の判断
刑訴法321条1項2号,刑訴法298条,刑訴法300条,憲法37条2項
判旨
検察官面前調書の証拠能力に関し、伝聞例外の要件たる「特信情況」の判断においては、外部的な特別の事情のみならず、供述の内容自体からその信用性を推知することも許容される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法321条1項2号後段における「相反する供述」をした場合の伝聞例外に関し、特信情況の判断基準として、供述内容そのものを考慮することができるか。また、証人尋問後の調書採用が憲法37条2項の反対尋問権を侵害するか。
規範
刑事訴訟法321条1項2号後段が定める伝聞例外の要件は、証拠とする必要性と、反対尋問を経ずとも十分な信用性が認められる「特信情況」の存在にある。この特信情況については、必ずしも外部的な特別の事情に限られず、供述の内容自体によってその信用性を推知せしめる事由が含まれると解すべきである。
重要事実
被告人らの刑事事件において、検察官は証人の検察官面前調書(検面調書)の証拠調べを請求した。当該証人は公判期日において検面調書と異なる供述をしたため、伝聞例外の要件が問題となった。また、当該調書の証拠調べが証人尋問後の公判期日で行われたこと、及び第一審が証人の再尋問請求を却下したことの適法性が争われた。
あてはめ
まず、特信情況の判断については、供述の内容自体によってその信用性を推知することが可能であり、原判決がこの趣旨に則って判断したことは正当である。次に、手続面については、主要な争点(金銭供与の趣旨や供述の任意性)について既に公判で十分な反対尋問の機会が与えられていた。証人尋問後に調書の証拠調べが行われたとしても、適法に手続がなされた以上、反対尋問権を奪ったことにはならない。さらに、一度なされた適法な証拠調べは、その後の再尋問請求の却下によって遡って不適法となるものではない。
結論
検面調書の証拠採用は適法であり、憲法37条2項の反対尋問権侵害にも当たらない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
検面調書の特信情況について「内容の信用性(内部的特性)」を考慮できるとした点に射程がある。もっとも、現行の実務・通説では外部的状況を重視する傾向があるため、答案上は「外部的情況を基本としつつ、その判断材料として供述内容の論理一貫性等も考慮し得る」という文脈で活用すべきである。また、反対尋問権との関係では、事後的にでも弾劾の機会があれば憲法違反とはならないとする基準を示している。
事件番号: 昭和30(あ)2053 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の供述に任意性を疑うべき証跡がない場合、憲法違反の主張は前提を欠く。また、証人の検察官面前調書について、公判供述よりも信用すべき特別の情況があると認定される限り、その証拠能力を認めた原判断は妥当である。 第1 事案の概要:被告人らの供述の任意性が争点となったほか、証人Aが検察官に対して行った…