判旨
モーターボート競走法27条2号の規定は、同法および施行規則において勝舟投票の内容が具体的に規定されていることから、犯罪構成要件が抽象的・曖昧であるとはいえず、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
モーターボート競走法27条2号が禁ずる「勝舟投票に類似する行為」という構成要件が、憲法31条の罪刑法定主義(明確性の原則)に抵触し違憲となるか。
規範
罪刑法定主義(憲法31条)の派生原理である明確性の原則に関し、犯罪の構成要件が抽象的かつ曖昧であるために通常の判断能力を有する者が何が禁止されているかを理解できない場合には、同条に違反して無効となる。しかし、他の条文や関連法規等によってその内容が具体的に特定されている場合には、明確性を欠くものとはいえない。
重要事実
上告人は、モーターボート競走法27条2号に規定される「勝舟投票に類似する行為」を処罰する規定が、犯罪の構成要件として抽象的かつ曖昧であり、憲法31条の罪刑法定主義に反すると主張した。また、同条2号が定める刑が憲法36条の「残虐な刑」に該当するとも主張した。
あてはめ
同法27条2号が禁止対象とする行為の前提となる「勝舟投票」の内容については、同法9条の3および同法施行規則5条ないし9条において、具体的かつ詳細に規定されている。そうであれば、これに「類似する行為」を処罰する旨の規定も、関連法規を参照することでその禁止範囲を具体的に画定することが可能である。したがって、通常の判断能力を有する者にとって禁止される行為が不明確であるとはいえず、構成要件が抽象的・曖昧であるとの批判は当たらない。
結論
モーターボート競走法27条2号は、犯罪構成要件が不明確であるとはいえず、憲法31条に違反しない。また、同規定が定める刑も憲法36条の残虐な刑には当たらない。
事件番号: 昭和42(あ)2203 / 裁判年月日: 昭和43年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実体刑罰法規に関する憲法違反の主張が、原審で何ら主張・判断を経ていない場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人がモーターボート競走法27条2号(私設投票所設置・勝舟投票類似行為等の禁止)違反に問われた事案において、弁護人は同条が憲法14条の法の下の平等に違反する旨を主張し…
実務上の射程
明確性の原則が争われる事案において、当該条文単体ではなく関連法規や施行規則等を含めた法体系全体から解釈することで構成要件の具体性が保たれていると判示する際の先例となる。実務上、行政刑法の白地刑罰法規に近い規定の合憲性を論じる際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和42(あ)1714 / 裁判年月日: 昭和43年2月15日 / 結論: 棄却
所論は、憲法第一四条第一項違反をいうが、モーターボート競走法第二七条第二号は同号に規定する行為を何人に対しても禁止し、これに違反した者を無差別に処罰するのであるから、所論違憲の主張はその前提を欠く。
事件番号: 昭和34(あ)1245 / 裁判年月日: 昭和37年1月30日 / 結論: 棄却
一 原審の是認した第一審判決が昭和三二年法律第一七〇号による改正前のモーターボート競走法二九条二項の賄ろ約束罪成立後その約束に基き賄ろを収受した被告人に対し同条三項を適用して判示追徴を言渡したのは正当である。 二 (註。原判決は高裁刑事判例集一二巻七号六八一頁に登載)