判旨
実体刑罰法規に関する憲法違反の主張が、原審で何ら主張・判断を経ていない場合には、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
原審において何ら主張・判断されていない実体刑罰法規の違憲の主張が、刑法訴訟法405条の上告理由として認められるか。
規範
刑罰を定める実体法規が憲法14条に違反するとの主張は、原審において主張・判断を経ていない限り、刑事訴訟法405条所定の上告理由として適法に構成されない。また、裁判所が職権で破棄すべき顕著な正義に反する事由(刑訴法411条)がない限り、上告は棄却される。
重要事実
被告人がモーターボート競走法27条2号(私設投票所設置・勝舟投票類似行為等の禁止)違反に問われた事案において、弁護人は同条が憲法14条の法の下の平等に違反する旨を主張して上告した。しかし、当該違憲の主張は第一審および控訴審を通じて一度も争点化されておらず、原判決においても一切判断されていなかった。
あてはめ
弁護人が主張するモーターボート競走法27条2号の憲法14条違反は、原審において全く主張されておらず、原判決の判断も経ていない。これは単なる実体刑罰法規に関する独自の違憲主張にすぎず、刑訴法405条が定める「憲法の違反があること」という上告理由の形式を満たさない。また、記録を精査しても、憲法違反の疑いによって原判決を職権で破棄しなければ著しく正義に反すると認められるような特段の事情(刑訴法411条の適用場面)は存在しないといえる。
結論
本件上告は適法な上告理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
上告審における憲法違反の主張は、原則として原審で争点化されている必要があることを示す。実務上、原審で主張しなかった憲法論を上告審で初めて持ち出すことは、刑訴法411条による職権発動を期待する以外に道がないことを意味するが、そのハードルは極めて高い。
事件番号: 昭和42(あ)1714 / 裁判年月日: 昭和43年2月15日 / 結論: 棄却
所論は、憲法第一四条第一項違反をいうが、モーターボート競走法第二七条第二号は同号に規定する行為を何人に対しても禁止し、これに違反した者を無差別に処罰するのであるから、所論違憲の主張はその前提を欠く。
事件番号: 昭和45(あ)1939 / 裁判年月日: 昭和46年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】モーターボート競走法27条2号の規定は、同法および施行規則において勝舟投票の内容が具体的に規定されていることから、犯罪構成要件が抽象的・曖昧であるとはいえず、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、モーターボート競走法27条2号に規定される「勝舟投票に類似する行為」を処罰する規定が、…
事件番号: 昭和49(あ)414 / 裁判年月日: 昭和49年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審において主張・判断を経ていない事項に関する憲法違反の主張、および量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人側の弁護人が、原審(控訴審)では主張も判断もされていなかった事項を持ち出し、それが憲法14条(法の下の平等)に違反するものであると主張して上…