競馬法第三〇条第三号について、弁護人の上告趣意は、憲法第三一条、第一四条第一項違反をいうけれども、競馬法第六条、昭和二九年農林省令第五五号競馬法施行規則第一条の二には、「勝馬投票」の内容について具体的に規定されているのであるから、これに類似する行為を処罰する競馬法第三〇条第三号の規定が、犯罪の構成要件として所論のごとく抽象的かつあいまいということはできないし、また右規定は「勝馬投票類似の行為」を犯罪の構成要件として規定するものであつて、所論のごとく類推解釈を認めているものではないから、所論憲法第三一条違反の主張はその前提を欠き。競馬法第三〇条第三号は同号に規定する行為を何人に対しても禁止し、これに違反した者を無差別に処罰するのであるから、所論憲法第一四条第一項違反の主張はその前提を欠く。
競馬法第三〇条第三号は憲法第三一条、第一四条第一項に違反するか。
競馬法30条3号,競馬法6条,同法施行規則(昭和29年農林省令55号)1条の2,憲法31条,憲法14条1項
判旨
競馬法30条3号にいう「勝馬投票類似の行為」は、同法および施行規則において「勝馬投票」の内容が具体的に規定されている以上、構成要件として抽象的・曖昧とはいえず、罪刑法定主義(憲法31条)に違反しない。
問題の所在(論点)
競馬法30条3号の「勝馬投票類似の行為」という規定が、構成要件として不明確であり憲法31条(罪刑法定主義)に反するか。また、同条が類推解釈を許容するものか。
規範
刑罰法規が憲法31条(罪刑法定主義)に違反するか否かは、構成要件が抽象的かつ曖昧であり、通常の判断能力を有する国民にとって処罰範囲が不明確であるかによって判断される。また、法文上「類似の行為」と規定されている場合は、法律自体がその類型を定めているのであり、類推解釈を認めるものではない。
重要事実
事件番号: 昭和53(あ)807 / 裁判年月日: 昭和53年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競馬法に基づき公共団体が行う勝馬投票券の発売行為が容認される一方で、私人が行う同法所定の賭博行為を処罰することは、立法政策の問題にすぎず、憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、競馬法30条3号(勝馬投票類似の行為を目的とする一種の賭博場開帳図利等)に該当する行為を行ったとして起訴さ…
被告人が競馬法30条3号違反(勝馬投票類似の行為)に問われた事案。弁護人は、同条にいう「類似の行為」という文言が、犯罪の構成要件として抽象的かつ曖昧であり、また類推解釈を認めるものであるから、憲法31条の適正手続に反すると主張して上告した。あわせて憲法14条(法の下の平等)違反も主張された。
あてはめ
競馬法6条および同法施行規則1条の2には、「勝馬投票」の内容が詳細かつ具体的に規定されている。そのため、これと比較して「類似」といえるか否かの判断基準は客観的に存在しており、処罰範囲が不明確とはいえない。また、同法30条3号は「勝馬投票類似の行為」そのものを独立した犯罪構成要件として直接規定しているに過ぎず、裁判所に対して類推解釈を認めているわけではない。したがって、同規定は明確性の原則に反するものではない。
結論
競馬法30条3号は、犯罪の構成要件として抽象的・曖昧ではなく、また類推解釈を認めるものでもないため、憲法31条に違反しない。
実務上の射程
「類似の行為」といった一般的・抽象的表現が法文に含まれる場合でも、比較対象(本件では勝馬投票)が他の条文等で具体化されていれば、明確性の原則に反しないとする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和54(あ)274 / 裁判年月日: 昭和54年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共団体による勝馬投票券の発売が公認されている一方で、私人が行う同様の行為を競馬法30条3号により処罰することは、立法政策の問題に属し、憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、競馬法30条3号に規定される勝馬投票券の発売に類似する行為(私設馬券の発売等)を行ったとして起訴された。これ…
事件番号: 昭和48(あ)1086 / 裁判年月日: 昭和48年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競馬法および自転車競技法の禁止規定は、対象となる行為を何人に対しても禁止し、違反者を一律無差別に処罰するものであるから、法の下の平等を定める憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、競馬法30条3号および自転車競技法18条2号の各規定に違反する行為を行ったとして処罰された。これに対し、…
事件番号: 昭和48(あ)1322 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の自白(供述調書)を唯一の証拠として被告人を有罪とすることは、憲法38条3項が禁止する「自己に不利益な唯一の証拠」による有罪判決には当たらない。また、本件では共犯者の供述調書以外にも証拠が存在するため、自白の補強証拠に関する憲法違反の主張は前提を欠く。 第1 事案の概要:被告人が有罪判決を受…