判旨
検察官に上訴権を認める刑事訴訟法351条は、二重の危険を禁止する憲法39条に違反しない。
問題の所在(論点)
検察官に上訴権を認める刑事訴訟法351条が、憲法39条(二重の危険の禁止)に違反するか。
規範
憲法39条後段が禁止する「二重の危険」とは、一の犯罪につき、被告人の身分を危険にさらす国家の訴追手続が重ねて行われることを指す。しかし、わが国の刑事手続における上訴制度は、第一審から上訴審までを一つの継続的な訴追手続(single jeopardy)と捉えるため、検察官による上訴は、新たな危険を創出するものではなく、同一の危険の継続にすぎない。
重要事実
被告人の弁護人は、検察官に上訴権を認めている刑事訴訟法351条が、憲法39条の規定する二重の危険の禁止に抵触し憲法違反であるとして、上告を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所は、過去の大法廷判決(昭和25年11月8日)を引用し、検察官の上訴を認める規定は憲法に違反しないとの判断を維持した。本件においても、この判例理論を変更する必要性は認められず、検察官の上訴権行使によって被告人が二重の危険にさらされることはないと判断される。
結論
検察官の上訴権を認める刑事訴訟法351条は憲法39条に違反せず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
検察官による控訴・上告の合憲性を基礎づける最重要判例である。司法試験においては、二重の危険の意味(継続的危険説)を説明する際の根拠として用いる。ただし、判決文自体は極めて簡潔であるため、昭和25年の大法廷判決の内容を前提とした答案構成が求められる。
事件番号: 昭和47(あ)45 / 裁判年月日: 昭和47年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を情状として考慮することは、前科に係る犯罪について重ねて処罰するものではなく、憲法39条の二重処罰禁止の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、裁判所が被告人の有する前科を量刑判断における一つの情状として考慮した。これに対し、被告人側は、既に刑が確定した前科を再び不利益…