判旨
判決後の訴訟記録の送付遅延が憲法37条1項の迅速な裁判の趣旨に反するとしても、その事実のみでは原判決の量刑不当を基礎付けるものではなく、判決に影響を及ぼすことが明らかな事項(刑訴法411条等)として判決の破棄事由にはならない。
問題の所在(論点)
判決後の訴訟記録の送付遅延が、憲法37条1項に違反する「裁判の遅延」として、原判決を破棄すべき理由(刑訴法411条等の判決に影響を及ぼすことが明らかな事項)に該当するか。
規範
迅速な裁判の保障(憲法37条1項)は、適正な手続により被告人の法的地位を確定させることを趣旨とするが、判決言い渡し後の送付手続等の遅延といった手続的瑕疵は、その事実のみでは直ちに原判決の量刑判断を不当とする事由にはならず、判決に影響を及ぼすべき明らかな事項として破棄理由を構成するものではない。
重要事実
被告人が一審・二審を経て上告した事案において、原判決(二審)が言い渡された後、裁判所が訴訟記録を上告審に送付するまでに1年の期間を要した。弁護人は、この訴訟記録送付の遅滞が刑訴規則251条に違反し、憲法37条1項の保障する迅速裁判の原則に反するものであり、原判決の量刑判断に影響を及ぼすと主張した。
あてはめ
記録上、原判決から上告審への送付に1年を要した事実は認められる。仮にこの遅延が刑事訴訟規則に違反し、憲法37条1項の迅速な裁判の趣旨に反する事態であったとしても、それは判決言い渡し後の事務手続上の問題にとどまる。したがって、既に下された原判決の量刑判断の正当性に遡って影響を及ぼすものではなく、判決破棄を要するほどの重大な事由とはいえない。
結論
憲法37条1項違反の主張は採用できず、上告棄却を免れない。
実務上の射程
本判決は、判決後の送付遅延について判断したものであり、審理自体の著しい遅延が憲法違反となるかという高田事件判決(最大法判昭47.12.20)の枠組みとは峻別される。答案上、送付遅延等の事務的ミスを理由に判決自体の破棄を求める論法は否定されるべきであり、あくまで「判決への影響」という観点から限定的に捉えるべきである。
事件番号: 昭和40(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和41年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に反する場合であっても、そのこと自体は判決に影響を及ぼすものではないため、これを理由に判決を破棄することはできない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原裁判所(控訴審)の審理が憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」の要請に反するものであると主張した。具体的に…
事件番号: 昭和54(あ)305 / 裁判年月日: 昭和54年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の訴訟手続において弁護人の訴訟活動に対する不当な制約がない限り、憲法37条1項、3項、31条、32条に違反するとの主張は前提を欠き、上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人が第一審の訴訟手続に関して、弁護人の訴訟活動に不当な制約があったと主張し、それが憲法37条1項、3項、31条、32…