判旨
公職選挙法138条1項による戸別訪問の禁止は、表現の自由を保障する憲法21条に違反せず、また憲法13条にも違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法138条1項による戸別訪問の禁止規定が、憲法21条および13条に違反し違憲ではないか。
規範
選挙の公正を確保し、有権者の自由な意思決定を妨げる不当な影響を排除するという合理的かつ正当な目的のためであれば、表現の自由に対する制約も許容される。戸別訪問の禁止が直ちに表現の自由の本質的な侵害に当たるとはいえない。
重要事実
被告人が選挙運動に際し、投票を得る目的で有権者の宅を戸別に訪問したところ、公職選挙法138条1項(戸別訪問の禁止)違反として起訴された。被告人側は、同条が憲法21条(表現の自由)および13条(幸福追求権)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
戸別訪問は、買収や利害誘導の温床となりやすく、また有権者の私生活の平穏を害するおそれがある。判例は、かかる弊害を防止し選挙の公正を保つという目的から、戸別訪問を一律に禁止することは憲法21条が保障する表現の自由の範囲外、あるいはその合理的制約の範囲内にあるとしている。また、この制約は公共の福祉に基づく正当なものであり、憲法13条にも違反しないと解される。
結論
公職選挙法138条による戸別訪問の禁止は憲法21条および13条に違反しない。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制約の合憲性を検討する際の基礎的な判例である。より新しい判例(昭和56年大法廷判決等)と併せて、目的の正当性と手段の合理性・必要性の観点から論じる際の出発点となる。憲法21条の制約論において、戸別訪問禁止の合憲性を前提とした答案構成に用いる。
事件番号: 昭和55(あ)352 / 裁判年月日: 昭和55年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法138条1項が定める戸別訪問の禁止は、選挙の公正を確保し、有権者の私生活の平穏を保護する目的による合理的な制限であり、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、公職選挙法138条1項が規定する戸別訪問の禁止規定に違反したとして起訴された。これに対し上告人は、同規定が表現の自由…