判旨
特別抗告の提起期間内に抗告申立書が最高裁判所に差し出されたとしても、期間内に原裁判所へ到達しない限り、不適法な申立てとなる。
問題の所在(論点)
特別抗告の申立書が提起期間内に最高裁判所に差し出されたが、原裁判所に到達したのが期間経過後であった場合、当該申立ては適法か。刑訴法423条1項の「原裁判所に差し出さなければならない」という要件の遵守が問われる。
規範
特別抗告を申し立てるには、刑訴法433条2項、434条、423条1項に基づき、法定の提起期間内に、抗告申立書を原裁判所に差し出さなければならない。上訴提起期間の遵守は、申立書が管轄権を有する適切な裁判所に到達した時点を基準に判断される。
重要事実
申立人は、昭和44年10月23日に原決定の送達を受けた。特別抗告の提起期間は同月28日までであった。申立人は、期限内である同月28日に最高裁判所へ特別抗告申立書を差し出した。最高裁判所は直ちに原裁判所である神戸地方裁判所尼崎支部に回送したが、同裁判所に到達したのは期限翌日の同月29日であった。
あてはめ
本件において、特別抗告の提起期間の末日は昭和44年10月28日である。申立書が同日に最高裁判所に差し出された事実は認められるが、刑訴法上の提出先は原裁判所である神戸地方裁判所尼崎支部である。最高裁判所から回送された申立書が同支部に到達したのは同月29日であり、法定の提起期間を徒過しているといえる。したがって、提出先の誤りにより期間内に正当な受理機関に書面が到達しなかった以上、期間遵守の効力は認められない。
結論
本件特別抗告は提起期間経過後の申立てであり、不適法として棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和62(し)72 / 裁判年月日: 昭和62年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】決定謄本が被告人と弁護人の双方に送達された場合、抗告申立期間は、被告人に対して送達された時から進行を開始する。 第1 事案の概要:被告人および弁護人に対し、原決定の謄本が送達された。具体的には、被告人に対しては昭和62年6月25日に、弁護人に対しては同年6月26日にそれぞれ送達が完了した。これに対…
刑事訴訟における上訴(抗告・控訴・上告)は、原則として書面を原裁判所に提出する「原裁判所主義」が採用されている。最高裁判所に直接書類を郵送・持参しても、期間内に原裁判所に回送・到達しない限り救済されないという厳格な実務運用を示すものである。答案上は、申立書の提出先誤認が期間徒過に直結する局面で引用すべき判例である。
事件番号: 昭和44(し)80 / 裁判年月日: 昭和44年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】簡易裁判所がした裁判官忌避申立却下決定に対しては、刑事訴訟法429条1項1号に基づき管轄地方裁判所へ準抗告をすべきであり、直接最高裁判所に対して特別抗告をすることはできない。 第1 事案の概要:被告人が道路交通法違反被告事件において、簡易裁判所の裁判官に対して忌避の申立てを行った。簡易裁判所はこの…
事件番号: 昭和43(し)81 / 裁判年月日: 昭和43年11月20日 / 結論: 棄却
本件特別抗告の提起期間は、昭和四三年九月二四日までであるところ、本件特別抗告の申立書は、同日午後五時一五分最高裁判所に差し出されたが、翌二五日原裁判所である東京地方裁判所に回送されて到達したものであるから、本件特別抗告の申立は、提起期間経過後のものであつて、不適法である。
事件番号: 昭和30(し)31 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条に規定する事由を欠き、単に原決定の不当を主張するにとどまる特別抗告は、不適法として棄却される。 第1 事案の概要:抗告人Aは、自らなした再審請求を認容しなかった原決定を不服として最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由は原決定を不当として非難するにとどまるものであっ…