刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が当該刑の言渡を受けた者に告知された後に刑の執行猶予期間が経過した場合には、この棄却決定に対して適法な特別抗告の申立があつても、同決定の執行が停止されないかぎり、同決定の告知により執行猶予言渡の取消の効果が発生し、刑の執行をなしうるものであることは、最高裁判所昭和四〇年九月八日大法廷決定(刑集一九巻六号六三六頁)の判示するところであつて、この判例は、正当として支持すべきである。
刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定に対して特別抗告の申立があつた後に刑の執行猶予期間が経過した場合と刑の執行
刑法27条,刑訴法424条,刑訴法434条,刑訴法471条
判旨
刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が告知された後は、適法な特別抗告がなされても、決定の執行が停止されない限り、猶予期間経過後であっても取消しの効力が発生し刑の執行が可能となる。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が告知された後、執行猶予期間が経過した場合において、特別抗告が係属中であっても執行猶予取消しの効力が維持され、刑の執行が可能となるか。刑法26条以下の執行猶予制度および刑訴法の不服申立ての効力が問題となる。
規範
刑の執行猶予言渡しの取消決定に対する即時抗告を棄却する決定が、当該刑の言渡しを受けた者に告知された場合には、たとえその後刑の執行猶予期間が経過したとしても、当該棄却決定に対して適法な特別抗告の申立てがなされ、かつ、同決定の執行が停止されない限り、告知により執行猶予取消しの効果が発生し、刑の執行をすることができる。
重要事実
東京地方裁判所は申立人に対し刑の執行猶予言渡しの取消決定を行い、これに対する異議申立てを棄却した。申立人はこれに対し即時抗告を申し立てたが、原審は提起期間経過後であるとして不適法と判断するとともに、実体上の判断としても異議申立棄却決定は正当であるとして即時抗告を棄却した。申立人は、即時抗告棄却決定の告知後に執行猶予期間が経過した場合の取消しの効力等を争い、特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和40(し)21 / 裁判年月日: 昭和40年9月8日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、刑の言渡を受けた者に告知された後特別抗告提起期間の満了前に、猶予期間が経過した場合においても、右決定の執行停止がなされない限り、その告知により執行猶予取消の効果が発生し、刑の執行をなし得るものと解すべきである。
あてはめ
最高裁判所大法廷昭和40年9月8日決定の判例を引用し、即時抗告棄却決定が告知された時点で取消しの効果は発生するものと解する。特別抗告の申立て自体には当然に執行を停止する効力はないため、裁判所による執行停止の決定がない限り、告知によって生じた執行猶予取消しの法的効果は妨げられない。したがって、告知後に形式的な猶予期間が満了したとしても、既になされた取消決定の効力により受刑者は刑の執行を受けるべき状態に置かれる。
結論
即時抗告棄却決定の告知により執行猶予取消しの効果は確定的に発生しており、その後に猶予期間が経過しても、特別抗告による執行停止がない限り刑の執行は可能である。
実務上の射程
執行猶予の取消手続における期間満了と取消しの効力発生時期に関する重要判例である。答案上は、不服申立て(特別抗告)の執行停止不効力(刑訴法434条、429条、432条準用)の原則と、執行猶予取消しの効力発生時期を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和54(し)29 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告の係属中に執行猶予期間に相当する期間が経過したことは、すでに発生している執行猶予取消の効果に影響しない。
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
事件番号: 昭和43(し)46 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定が刑の執行猶予期間経過前に刑の言渡を受けた者に告知された場合には、執行猶予の言渡取消の効果が発生するのであつて、その後右即時抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に右猶予期間が満了しても、そのこと自体によつては右取消の効果は左右されない。