刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、刑の言渡を受けた者に告知された後特別抗告提起期間の満了前に、猶予期間が経過した場合においても、右決定の執行停止がなされない限り、その告知により執行猶予取消の効果が発生し、刑の執行をなし得るものと解すべきである。
刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定の告知後特別抗告提起期間の満了前に猶予期間が経過した場合と刑の執行。
刑法27条,刑訴法434条,刑訴法424条
判旨
執行猶予取消決定に対する即時抗告を棄却する決定が、猶予期間経過前に告知された場合には、執行猶予取消の効力が発生する。特別抗告は原則として執行停止の効力を有しないため、特別抗告提起期間中に猶予期間が経過しても、既になされた取消決定の効力は失われず、検察官は刑の執行指揮をなし得る。
問題の所在(論点)
執行猶予取消決定に対する即時抗告を棄却する決定が猶予期間内に告知された場合、その後の特別抗告提起期間中に猶予期間が経過しても、取消しの効力は維持され、刑を執行できるか。刑法27条の「取り消されることなく」の意義と、特別抗告の執行停止効の有無が問題となる。
規範
刑法27条の「刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく」とは、猶予期間内に取消決定の効力が発生することを指す。即時抗告期間中またはその係属中は刑訴法425条により執行が停止されるが、即時抗告棄却決定が告知されれば、取消決定の効力が発生し、刑の執行指揮が可能となる。これに対し、特別抗告は刑訴法434条・424条により原則として執行停止の効力を有しないため、特別抗告提起期間内であっても、裁判所による特段の執行停止がなされない限り、取消決定は直ちに執行し得る状態(効力発生状態)にあると解すべきである。
重要事実
申立人は窃盗罪により懲役刑・執行猶予の判決を受けたが、前刑の発覚により猶予期間内に執行猶予取消決定を受けた。申立人は即時抗告を申し立てたが棄却され、猶予期間満了の前日(昭和39年11月5日)にその告知を受けた。申立人はその後特別抗告を申し立てたが、その提起期間中に前刑の執行猶予期間が満了した。検察官は、即時抗告棄却決定の告知後、特別抗告の提起期間内または係属中に本件各刑の執行を指揮した。
事件番号: 昭和50(し)109 / 裁判年月日: 昭和51年2月20日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に告知されたことにより、執行猶予云渡の取消の効果が発生したものであつて、本件特別抗告係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき事由とはならない。
あてはめ
本件において、執行猶予取消決定に対する即時抗告を棄却する決定の告知は昭和39年11月5日になされており、これは荒尾簡易裁判所言渡しの刑の執行猶予期間(同月6日満了)の経過前であった。この告知により、執行猶予取消決定の効力は発生したといえる。特別抗告には執行を停止する効力がないため、たとえ特別抗告提起期間中に猶予期間が満了したとしても、既に発生した取消決定の効力が遡って失われることはない。したがって、告知を受けた時点で取消決定は「執行し得る状態」にあり、検察官による執行指揮は適法な手続に基づくものであると評価される。
結論
即時抗告棄却決定が猶予期間内に告知された以上、特別抗告提起期間中に猶予期間が満了しても取消しの効力は妨げられず、刑の執行指揮は適法である。
実務上の射程
執行猶予の失効(刑法27条)を防ぐための「取消し」のタイミングについて、即時抗告棄却決定の「告知」時を基準とする実務上の指針を示すものである。特別抗告が権利抗告ではない(刑訴法433条)ことを背景に、即時抗告棄却による「効力の発生」と「確定」を区別し、効力発生が猶予期間内であれば足りるとする。答案上は、猶予期間満了直前の手続において、どの段階で「取消し」が完了したと言えるかの論証に用いる。
事件番号: 昭和44(し)50 / 裁判年月日: 昭和44年11月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が当該刑の言渡を受けた者に告知された後に刑の執行猶予期間が経過した場合には、この棄却決定に対して適法な特別抗告の申立があつても、同決定の執行が停止されないかぎり、同決定の告知により執行猶予言渡の取消の効果が発生し、刑の執行をなしうるものであることは、最高裁判所昭和四〇年…
事件番号: 昭和47(し)57 / 裁判年月日: 昭和47年12月26日 / 結論: その他
特別送達の方法により、執行猶予取消決定についての即時抗告棄却決定の謄本を、被請求人に送達する手続をとつたところ、それが執行猶予期間内に送達されなかつた場合において、右特別送達を付郵便送達とすることにより、有効に執行猶予が取り消されたものとすることはできない。
事件番号: 昭和43(し)46 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定が刑の執行猶予期間経過前に刑の言渡を受けた者に告知された場合には、執行猶予の言渡取消の効果が発生するのであつて、その後右即時抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に右猶予期間が満了しても、そのこと自体によつては右取消の効果は左右されない。
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…