特別送達の方法により、執行猶予取消決定についての即時抗告棄却決定の謄本を、被請求人に送達する手続をとつたところ、それが執行猶予期間内に送達されなかつた場合において、右特別送達を付郵便送達とすることにより、有効に執行猶予が取り消されたものとすることはできない。
不送達となつた特別送達を付郵便送達とすることにより執行猶予が取り消されたものとすることの可否
刑法26条の2,刑訴法54条,刑訴規則63条,民訴法162条,民訴法172条
判旨
執行猶予取消決定に対し即時抗告がなされた場合、執行猶予期間内に即時抗告棄却決定が被請求人に告知されなければ、有効に執行猶予を取り消すことはできない。また、特別送達の手続きをとった以上、それが期間内に到達しなかった場合に付郵便送達として有効視することは認められない。
問題の所在(論点)
執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、執行猶予期間満了後に告知された場合であっても、有効に執行猶予を取り消すことができるか。また、期間内に未了となった特別送達を付郵便送達として有効視できるか。
規範
執行猶予取消決定につき即時抗告がなされた場合において、当該取消決定が確定し有効に執行猶予が取り消されるためには、執行猶予期間内に、即時抗告棄却決定が被請求人に告知されることを要する。また、送達手続きにおいて、特別送達と付郵便送達は手続・効果を異にするものであるから、実施された特別送達が期間内に未了である場合に、これを付郵便送達として有効視することはできない。
重要事実
東京地裁が申立人に対し執行猶予取消決定を行い、申立人が即時抗告した。東京高裁は昭和47年8月24日に抗告棄却決定を下し、同日中に特別送達の手続きをとったが、申立人に送達されたのは同月30日であった。しかし、申立人の執行猶予期間は、送達前日の同月29日に満了していた。検察官は、期間内の8月26日に送達手続きが開始されていることから、付郵便送達として有効視し、期間内に告知があったと解すべきと主張した。
事件番号: 昭和57(し)107 / 裁判年月日: 昭和57年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予取消決定に対する特別抗告の提起期間中に執行猶予期間が満了した場合であっても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じず、取消決定は有効に確定する。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された判決が確定し、その猶予期間中に執行猶予取消決定がなされた。原決定(取消決定)の告知があった昭和5…
あてはめ
本件では、即時抗告棄却決定の謄本が申立人に送達されたのは昭和47年8月30日であり、執行猶予期間満了日である同月29日を徒過している。判例の枠組みによれば、告知は期間内に行われる必要があるため、本件告知は時期を失したものといえる。また、裁判所が実際に選択した手続きは特別送達であり、これと性質を異にする付郵便送達としての効力を認めることは、手続きの厳格性に照らし許容されない。したがって、期間内に適法な告知があったとは認められない。
結論
即時抗告棄却決定が執行猶予期間満了までに告知されなかった以上、もはや有効に執行猶予を取り消すことはできず、本件取消請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
執行猶予期間の満了による刑の言渡しの失当(刑法27条)を防ぐための時間的限界を明示した判例である。答案上は、取消決定の確定タイミングと期間満了の関係が問題となる場面で、告知・送達の完了が期間内であることを要件として論じる際に活用する。
事件番号: 昭和43(し)46 / 裁判年月日: 昭和43年7月11日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予の言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定が刑の執行猶予期間経過前に刑の言渡を受けた者に告知された場合には、執行猶予の言渡取消の効果が発生するのであつて、その後右即時抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に右猶予期間が満了しても、そのこと自体によつては右取消の効果は左右されない。
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
事件番号: 昭和49(し)6 / 裁判年月日: 昭和49年2月7日 / 結論: 棄却
本件においては、刑の執行猶予言渡の取消決定に対する即時抗告棄却決定が執行猶予期間経過前に申立人に対し告知されたことにより、執行猶予言渡の取消の効果が発生したものであつて、その後本件特別抗告の係属中に右猶予期間が満了したことは、原決定を取り消すべき理由とはならない(当裁判所昭和四〇年(し)第二一号同年九月八日大法廷決定・…