判旨
サンフランシスコ平和条約の発効により、朝鮮人としての法的地位を有する者は日本国籍を喪失した。そのため、同条約発効後に施行された外国人登録法により、これらの方々に外国人としての登録義務を課すことは適法である。
問題の所在(論点)
1.平和条約の発効により、朝鮮人としての法的地位を有する者は日本国籍を喪失するか。2.登録不申請の罪が成立した者に、なお継続して登録申請義務を課すことは、憲法38条1項に違反するか。
規範
日本と韓国の併合後も、朝鮮人としての法的地位をもつ者は国内法上、日本人としての地位をもつ者と明確に区別されていた。平和条約の発効により、これらの者は当然に日本国籍を喪失し、外国人登録法の適用対象となる「外国人」に該当する。
重要事実
被告人は、朝鮮人としての法的地位を有する者であったが、外国人登録法に基づく登録申請を行わなかった。これに対し、登録不申請の罪が問われたが、被告人側は、自身が日本国籍を喪失していないこと、及び登録不申請の罪が成立した後も継続して申請義務を課すことは自己負罪拒否特権(憲法38条1項)に反すること等を主張して争った。
あてはめ
1.平和条約の発効により、朝鮮人としての法的地位を有する者は、日本の国籍を喪失したものと解される。したがって、同条約発効後に施行された外国人登録法に基づき、外国人として登録義務を課される地位にある。2.登録不申請の罪が成立した後も、行政上の必要性から登録申請義務を課し続けることは、自己の刑事責任に関する供述を強要するものとはいえず、憲法38条1項の趣旨に照らして合憲である。
結論
朝鮮人としての法的地位を有する者は日本国籍を喪失しており、外国人登録法に基づく登録義務を負う。また、当該義務の継続課置は憲法38条1項に違反しない。
実務上の射程
平和条約発効に伴う国籍喪失に関するリーディングケースである。答案上は、外国人登録法の適用対象としての「外国人」の定義や、特別永住者の法的地位の歴史的経緯を論じる際の基礎となる。また、継続的な行政上の義務と自己負罪拒否特権の限界を示す判例としても参照される。
事件番号: 昭和34(あ)434 / 裁判年月日: 昭和34年6月9日 / 結論: 棄却
外国人は不法に本邦に入つた者といえども、外国人登録法第三条第一項所定の登録申請義務があり、不法入国者に登録申請義務を課したからといつて自己の不法入国の罪を供述するのと同一の結果を来すものということができないこと及び不法入国の罪によつて処罰される危険において登録することを期待できないとする見解が登録の本質を誤解する失当の…