いわゆる外国人登録証焼き捨て事件
判旨
日本国との平和条約の発効により、朝鮮・台湾等の領土分離に伴い、当該地域の住民であった者は日本国籍を喪失し、外国人登録法の適用を受けることとなる。この解釈は憲法10条、11条、13条、31条、98条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
日本国との平和条約2条(a)項による日本国籍の喪失が憲法10条等に違反しないか。また、国籍喪失を前提として外国人登録法を適用することが人権保障(憲法11条、13条等)や適正手続(31条)に反しないか。
規範
日本国との平和条約2条(a)項による領土放棄に伴い、当該地域に属する住民の日本国籍は、特段の合意がない限り条約の効力発生と同時に当然に喪失する。国籍の喪失は憲法10条の委ねる法律(条約を含む)の規定に基づくものであり、一連の国籍喪失に伴う外国人登録法の適用等は憲法上の基本的人権の保障や適正手続に反しない。
重要事実
被告人は朝鮮半島等にルーツを持つ人物(判決文上詳細は不明)であり、昭和27年の平和条約発効により日本国籍を喪失したとみなされた。被告人は、自身を日本人ではない「外国人」として扱う改正前外国人登録法の適用を不服とし、日本国籍の維持を主張して、同法の適用は憲法各条項に違反するとして上告した。
あてはめ
平和条約2条(a)項は、日本が朝鮮の独立を承認したものであり、これに伴う国籍の変更は国際法上の原則及び条約の趣旨に基づく。憲法10条は「日本国民たる要件」を法律に委ねており、条約による国籍の喪失は同条の許容する範囲内である。したがって、国籍喪失後の被告人は外国人登録法上の「外国人」に該当することとなり、居住管理等の行政上の目的から同法を適用することは、公共の福祉に基づく合理的な制限として憲法31条、10条ないし13条、98条2項のいずれにも抵触しない。
結論
平和条約による日本国籍の喪失は憲法に違反せず、被告人に対し外国人登録法を適用したことは正当である。
実務上の射程
平和条約に伴う旧植民地出身者の国籍喪失に関するリーディングケース(大法廷判決)を再確認した判決である。答案上では、国籍の法的性質や憲法10条の解釈、及び条約の国内法的効力が問題となる場面で、国籍喪失の当然性を肯定する根拠として引用する。
事件番号: 昭和27(あ)3956 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
昭和二〇年勅令第五四二号及びこれに基いて発せられた外国人登録令が日本憲法にかかわりなく同憲法施行後も同憲法外において法的効力を有し、しかも右勅令第五四二号が日本国との平和条約発効の日から廃止されたけれども、そのために同勅令が遡つて無効となるものでもなく、また同勅令に基いて発せられた命令が日本国との平和条約が発効したとい…