「A吸血鬼」「暴力所長Bを追放せよ」と記載したビラを乗用車の車体に貼付して市内の目抜通りを行進するように公然他人を侮辱する行為は、言論の自由の乱用であつて、憲法二一条の保障する言論の自由の範囲内に属すると認めることができないことは当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第一二四一号、同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁)の趣旨に照らして明らかである。
侮辱と憲法二一条
刑法231条,憲法21条
判旨
公然と他人を侮辱する行為は言論の自由の濫用であって、憲法21条の保障する表現の自由の範囲内に属さない。
問題の所在(論点)
公然と他人を侮辱する行為が、憲法21条1項の保障する表現の自由の範囲に含まれるか。
規範
憲法21条1項が保障する言論の自由といえども絶対無制限ではなく、公然と他人を侮辱する行為は言論の自由の濫用にあたり、表現の自由の保障の範囲を逸脱する。
重要事実
被告人が公然と他人を侮辱する行為に及んだとして侮辱罪等に問われた。これに対し弁護人は、当該行為は表現の自由(憲法21条)や労働基本権(憲法28条)によって保障される正当な行為であると主張して上告した。
あてはめ
本件における行為は、第1審判決が認定した通り「公然他人を侮辱する行為」に該当する。このような行為は、他者の名誉を不当に侵害するものであって、言論の自由の濫用といわざるを得ない。したがって、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属すると認めることはできない。
結論
公然と他人を侮辱する行為は憲法21条により保障されず、侮辱罪による処罰は合憲である。
実務上の射程
表現の自由と名誉権の衝突において、単純な「侮辱」は特段の価値を認めず保障の範囲外とする点に特徴がある。名誉毀損(刑法230条の2)のような公共性・公益目的等による違法性阻却の検討以前に、表現の態様が著しく不当な場合には濫用として退けられることを示唆している。
事件番号: 昭和44(あ)414 / 裁判年月日: 昭和44年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不特定または多数の人が認識し得る状態(公然)において、事実を摘示せずに人を蔑視する価値判断を表示した行為は、侮辱罪(刑法231条)を構成する。 第1 事案の概要:被告人の具体的な言動や場所、対象者についての詳細は判決文からは不明であるが、被告人が人を蔑視する表現を用いた行為について、原審は公然性と…