判旨
不特定または多数の人が認識し得る状態(公然)において、事実を摘示せずに人を蔑視する価値判断を表示した行為は、侮辱罪(刑法231条)を構成する。
問題の所在(論点)
被告人の行為が、刑法231条の「公然と人を侮辱した」という要件に該当するか。
規範
「公然」とは、不特定または多数の人が認識し得る状態をいう。「侮辱」とは、事実を摘示せずに、抽象的な判断として人を蔑視する価値判断を表示することをいう。
重要事実
被告人の具体的な言動や場所、対象者についての詳細は判決文からは不明であるが、被告人が人を蔑視する表現を用いた行為について、原審は公然性と侮辱の成立を認めていた。
あてはめ
判決文には具体的な事実関係が詳述されていないため詳細は不明であるが、最高裁は原審の判断(被告人の所為が公然人を侮辱したものにあたるとした判断)を相当であると認めている。これにより、本件の行為態様は不特定・多数が認識し得る状況下での人への蔑視表現であったと解される。
結論
被告人の所為は公然人を侮辱したものにあたり、侮辱罪が成立する。
実務上の射程
侮辱罪の構成要件(公然性・侮辱)を確認する極めて簡潔な判例である。事実適示を伴わない「バカ」「デマカセ」といった人格を否定する抽象的な表現が、公衆の面前でなされた場合に本罪が成立することを補強する際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和44(あ)806 / 裁判年月日: 昭和44年10月23日 / 結論: 棄却
「A吸血鬼」「暴力所長Bを追放せよ」と記載したビラを乗用車の車体に貼付して市内の目抜通りを行進するように公然他人を侮辱する行為は、言論の自由の乱用であつて、憲法二一条の保障する言論の自由の範囲内に属すると認めることができないことは当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第一二四一号、同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七…